ゆうちょPayの取り組みから見る「金融機関にとってのDXの現実解」~FIT展2019トークセッションレポート
こんにちは。
2019年10月25日(金)に東京国際フォーラムで開催された、FIT展2019でのトークセッションレポートをお届けします。
この日は、先日FANSHIPを導入いただいた「ゆうちょPay」を提供するゆうちょ銀行様と、ゆうちょ銀行のデジタル化を支援するNTTデータ様(モデレーター)、UI・UXを支援するフォーデジット様、アイリッジの4社で、金融機関にとってのDX(デジタルトランスフォーメーション)についてディスカッションしました。
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FANSHIPは、ゆうちょPay以外にも、メガバンク、地銀27行、信用金庫19金庫、信用組合2組合の残高照会アプリなどに組み込まれているって知っていましたか?
これまで、重要情報やキャンペーン、地域情報、為替変動のタイムリーなお知らせ、口座に連動したOne to Oneメッセージ配信をメインにご利用いただいてきましたが、最近ではデータ活用やアプリ以外のチャネルへの展開なども始まっています!
それではトークセッションのダイジェストをどうぞ。
登壇者紹介
※写真左から順に
株式会社ゆうちょ銀行
コーポレートスタッフ部門 経営企画部 グループリーダー
北野 義人様
株式会社NTTデータ
第一金融事業本部 郵政ビジネス事業部 企画開発統括部 デジタルビジネス推進担当部長
青柳 雄一様
株式会社フォーデジット
取締役
末成 武大様
株式会社アイリッジ
テレコム&フィナンシャル事業グループ シニアマネージャー
内田 智英
金融機関のDX推進の現状/課題は
銀行は総力戦でデジタル化に取り組むべき。まだ山が動いていない
※以下、敬称略
NTTデータ 青柳:
今日のテーマは「金融機関にとってのDX(デジタルトランスフォーメーション)の現実解」。
ゆうちょ銀行の北野様からはまず金融機関としての現状や課題感などいかがですか。
ゆうちょ銀行 北野:
現状、プロセスのデジタル化のフェーズからサービス全体をデジタルで再デザインして普及させるフェーズに入ってきていると思います。
一方、金融サービスとしてデジタルサービスを爆発的に普及させたという成功体験はまだ少なく、どのように普及させていくかが一つ課題ではないでしょうか。
社内では総力戦と呼んでいますが、マーケティングで言うところの4Pを総動員しないと難しいと感じています。
NTTデータ 青柳:
末成さんと内田さんからは、外部から金融機関をご覧になって、もっとこうすれば上手く行くのではというご意見などいかがですか。
フォーデジット 末成:
デザインやユーザーのことを考えるという視点で支援させてもらっていますが、目的を一緒に考え土壌を作っていくところからやらせていただく中で、体験の変化に合わせてスピード感を持って改善していくという点においてはまだまだ課題感があると感じています。
アイリッジ 内田:
アプリは作ることが目的でなく、作ってからどう運用していくかが本番で、デジタル戦略部みたいなものが立ち上がったとしても、そこが全部やってくれるだろうでは上手く行きません。
デジタルはただの技術であり、リアルとどう連携するか、部門横断で仕組みを推進していくことが重要かなと考えています。
金融機関のDX推進を阻害するものは何か?
「金融機関は失敗できない」という、法的・文化的な壁
NTTデータ 青柳:そうした時に、具体的にDX推進を阻害しているものはそれぞれ何だと思われますか。
ゆうちょ銀行 北野:
デジタルの分野ではスピードがとにかく重要だと感じています。。
正解がなかなかわからないので、高速でPDCA回すことが必要です。
そのスピードを阻害する要素として、システムや人的リソース、あとはコミュニケーションというのがあるでしょうか。
共通認識を持っていろんな部署を巻き込み、進めていけるかがキーになると思います。
フォーデジット 末成:
世の中にまだないものを生み出していくためには小さい失敗を繰り返していくことが重要ですし、デザイン的にも、デザインチームも開発チームもワンチームになって失敗していくことがとても重要と言われています。
この点で、”金融機関は失敗できない”というのが一つの壁だとは思っています。
NTTデータ 青柳:
ここはSIerとしても同意見です。
金融機関のシステムとなると少しの失敗でも社会問題としてメディアに取り上げられてしまうこともあり、石橋を叩いて渡らない、ということも起きがちなので、風土改革やカルチャー改革を先に進めることが必要と感じますね。
アイリッジ 内田:
オンライン(デジタル)側に対してオフラインの店舗のほうがボリュームが大きく、従事する人間が圧倒的に多い中での分断というのがあります。
最終ゴールは何なのか、それぞれの部門やエンドのお客さまがどうやったらハッピーになるか、そのために部署ごとにどういうKPIを持ってそれぞれデジタルを活用していくのか、目標設定、チーム、運用が大切だと考えます。
ハードルを下げるために今、何をするべきか
トップの理解を得て意思決定のスピードを加速する
NTTデータ 青柳:
では、これらの阻害要因を取り除くに当たって重要なことは何でしょうか。
アイリッジ 内田:
トップの方々の理解と旗振り――なんとしてでもやり切るんだという大号令をかけていただき最強チームを作っていくこと、その中でいろんなチャレンジをして高速PDCA回していくことが重要だと考えています。
フォーデジット 末成:
意思決定される方々に正しく理解していただくこと。
そのためにビジュアライズされた共感しやすい未来像を提示することはデザインの力でやっていける部分です。
ゆうちょ銀行 北野:
経営層とのコミュニケーションで言うと、ゆうちょPay等の重要なプロジェクトは社長直轄プロジェクトとなっています。
また、それ以外のプロジェクトも企画、営業、事務、システムの各部門の担当役員でDX連絡会というものを作り、緊密にコミュニケーションを取りながら進めています。
NTTデータ 青柳:
ゆうちょ銀行経営企画部様とは1年半くらいご一緒させていただいていますが、直轄組織が出来てスピード感が非常に上がったというのは確かに感じます。意思決定の速さが重要であるというのはSIerの立場からも実感がありますね。
金融機関にとってDXにおける現実解とは?(まとめ)
仲間を見つけまず動く。外部の力を上手く使う
NTTデータ 青柳:
そろそろまとめに入りたいのですが、現実解としてどうやっていったらいいんだろうという疑問へのお考えをお願いします。
ゆうちょ銀行 北野:
一つの現実的な解決策としては外部のリソースを有効に活用していくことですね。
それによって投資リスクをある程度コントロール出来ます。
一方、別のリスクとして内部の人材が育たないのではという懸念もあるので、一緒に走ってもらえる信頼できるパートナー選びが非常に重要になってくると思います。
フォーデジット 末成:
デザインシンキングの考え方は関係者とコラボレーションしていくところにあるので、我々がもっと中に入っていくことが重要だと思っています。
それぞれ企業文化が違うのも当たり前なので、お互いがお互いを理解し合った上で正しいやり方を見つけていくことが必要ではないでしょうか。
アイリッジ 内田:
小さくてもいいのでまず成功体験を作っていくことですね。
それをもとに次何をやろうかという流れに乗せていくことが重要だと思っています。
検討だけしてなかなか始められないよりも、まずは始めてどんどん仲間を増やしていくことが大切です。
NTTデータ 青柳:
手前味噌ながら、みなさん共通している一つのキーワードとして「オープン・イノベーション」が思い浮かびました。
5、6年前からNTTデータでベンチャー企業を含めた取り組みということでやらせてもらっていますが、他人のふんどしで相撲を取るというか、ゆうちょ銀行様の件で言うとフォーデジットさんやアイリッジさんなど外部の力を上手く借りてケイパビリティを上げていくやり方は一つの現実解であり、オープン・イノベーションの真髄かもしれないですね。