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顧客VOICE:各種賞も続々受賞した新しい混雑緩和施策・東急線「グッチョイクーポン」が成功した理由

都心と神奈川県をつなぐ重要路線として知られる東急電鉄様。

同社が提供されている「東急線アプリ」では、通勤ラッシュ時間帯の混雑緩和に取り組む「グッチョイクーポン」の配布という新たな試みが、社会的にも大きく取り上げられました。

本インタビューでは、2017年頃からメインで担当されている、東急電鉄株式会社 鉄道事業本部経営戦略部広報CS課の片貝真帆様にお話を伺いました。

 

写真左から、アイリッジ 池田、東急電鉄株式会社 鉄道事業本部 経営戦略部 広報CS課 吉村 俊彦様、同課課長 内田 智也様、同課 片貝 真帆様、アイリッジ 飯野、吉岡

 

─アイリッジを知ったきっかけとご依頼いただくに至った経緯を教えていただけますか。

当初は、東急グループの施設情報や沿線のお出かけ情報をメールで受け取れる会員サービス「TOKYUモバイル」を元にした、販促寄りのアプリからスタートしていました。開発当初の担当に確認したところ、何社かコンペをした中で、アイリッジさんが担当されていたGUさんのアプリの完成度が素晴らしかったこと、またスピード感や金額面が一番フィットしていたため、ご依頼することとなったそうです。

─現在のアプリの一番の目的は何でしょうか。

鉄道は安全運行・安定輸送という基盤の上に成り立っていますので、運行情報をいち早くお客さまにお届するのが一番大切だと考えています。その上で、より快適に利用していただくため、混雑度やバリアフリーに関する情報の配信などを行い、東急線沿線に住み続けていきたいと思っていただける要素の一つになれたらと思って運用しています。

 

楽しみながらピークシフトしてもらう「グッチョイクーポン」

 

─混雑緩和の取り組みと言えば、グッドデザイン賞やスムーズビズ推進大賞も受賞された、オフピーク通勤を提案するアプリ内キャンペーン「グッチョイクーポン」があります。始発から朝7時半までに指定駅に到着しているとプッシュ通知でクーポンが届くというキャンペーンですが、こちらの企画の経緯はどんなものだったのでしょうか。

2017年頃の田園都市線は混雑による遅延日数が多く、お客さまからもご意見をいただき、社内でも喫緊の課題としておりました。東京都でも東京五輪に向け、朝ラッシュピーク時間帯の混雑緩和のため「時差Biz」に力を入れていたというタイミングもありソフト面での解決法をアイリッジさんにご相談したのが始まりです。そこで最終的に形になったのが、ビーコンとGPSを使ったグッチョイクーポンでした。

─ピークシフトの効果も見られ、現在では独立したプロジェクトとして広告メニューを展開するまでに成長されているんですよね。

ダイヤ改正などハード面も含めた施策全体の効果によるものですが、実際の混雑緩和も徐々に進んでいます。グッチョイクーポン参加時のアンケートベースでは、田園都市線だけで1時間あたり1,200人ほどのお客さまがグッチョイクーポンを利用してのピークシフトにご協力くださっています。

グッチョイクーポンへの協賛については弊社の広告販売部隊が広告出稿をセットで販売し、多くの企業様にご賛同いただいています。そのポスターの中などでも「早起きしたらこんなクーポンがもらえますよ」というふうに協賛企業様の商品を宣伝しています。

 

「絶対に成功させる。」強い思いとチャレンジ

 

 

─当初は検知漏れしたらどうするのかなどの議論もあったようですが、堅実な鉄道会社でありながら、やったら面白そうだけどクレームのリスクもある、という取り組みに挑戦して成果を上げられているのがすごいです。

広報CS課では「絶対に成功させる」という強い思いがありました。万が一ポイント付与が漏れたとしても、後からきちんとお詫びし、改めて付与すればリカバリーできます。鉄道と同等の完璧さを求めていたら、いつになっても実現できないと、振り切ったというのがありますね。

初の試みで上手くいくかもまったく未知数な中、アイリッジさんにもご協力いただき、実際のラッシュ時の電車に乗り込んで何往復もテストをしたのが懐かしいです。

─そのエピソードは以前聞いたことがあって驚きました。

アイリッジ吉岡:10両あったらそのどの車両でもきちんと検知されるかiOSとAndroid両方でテストする必要があったので、学生アルバイトにも協力してもらってLINEで連絡を取り合いながら全車両に分かれて乗るんですが、その連絡がうまく取れず乗り遅れる人や降りられず行き過ぎる人が出たりハプニング盛りだくさんでしたね。

(一同深く頷く)

アイリッジ吉岡:当初ビーコンだけでやろうとしたらiOSはちゃんと検知できたもののAndroidが50%くらいしか検知できず、このままだとご満足いただける品質でサービスが提供できないと考え急遽GPSを組み合わせて検知ポイントを増やすハイブリッドタイプに変更しました。

 

発注者と受注者の壁を越えたOne team

 

 

─実証実験時は、日頃のアイリッジの業務では得られない経験が他にもいろいろあったとか。

アイリッジ吉岡:まずビーコン設置は、僕がトラックで2mの脚立を渋谷駅まで運んで、同僚と一緒にヘルメットを被って終電後の夜間作業でやりました。

片貝様:おそろいの黒ポロシャツも着ていて、アイリッジさんもヘルメット持ってるんですねなんて言ったら「このために買いました」って。手作り感がすごかったですね(笑)。

アイリッジ飯野:リリースまであと数日という最後のテストでやっぱりAndroidの検知状況に若干の不安が残っていて、もう広告も出すしどうしようって渋谷のエクセルシオールで反省会をした結果、お客さまからのお問い合わせに対応するコールセンターが必要だとなって。

片貝様:アイリッジさんにコールセンター用のスマホをご用意いただき、今日は吉岡さん、今日は飯野さんと回し持ってもらって直接お客さま対応いただくというすごいお願いをしました。

アイリッジ吉岡:PCがないとポイント付与対応ができないので、朝7時くらいに出社して(※アイリッジの定時は10時)スマホを肌身放さず持って待機して、かかってきたら「ありがとうございます。グッチョイクーポン事務局です。」(電話を受けるジェスチャー)。

そしたら、ある時自分のスマホにかかってきた電話に同じように出ちゃって、かけてきた人が間違えたと思って切られちゃったこともありました(笑)。

 

社内インフラとしてのアプリ活用でお客さま視点に立つ

 

─他にもさまざまな機能追加や取り組みを実施される中で、全体を通しての成功体験や課題などお聞きできますか。

改札の混雑度をリアルタイム表示する「駅視-vision(エキシビジョン)」では、利用状況を分析すると、列車の運行に支障が出ている日の利用率が高いなど、状況に応じてきちんと必要とされていることがわかったほか、時間帯別の混雑度傾向値は社内的なツールとしても有用だと評価されています。

─専用システムではなく、お客さまと同じ東急線アプリがオペレーションで使われるんですか?

東急線アプリは、乗務員も駅の監督者も係員もiPadから東急線アプリを確認し、遅延時のアナウンスするなど、社内のインフラにもなっています。混雑度の傾向値などが可視化され、要員配置を決める本社部隊でも判断の材料として活用しています。お客さまと同じ情報を確認しながら対応することで、さらによいサービスをお客さまに還元できていると感じています。

─東急線アプリ、本当に大活躍してますね。私たちもうれしいです。

もちろん課題というか、私自身が気をつけなくてはと思っている部分もあって、情報配信系アプリは情報とUI/UXを最新に保つことが命だと思うので、かゆいところに手が届くようなちょっとしたアップデートなど、現状に満足しない運用をもっと積極的にやっていきたいです。

あとはいろいろな部署で新しい情報が日々多く発生しているわりに現状それを取りまとめる機関がないので、情報をもっとスムーズに吸い上げ、お客さまに正しくお伝えできるような仕組みを作っていきたいと思っています。

─長いお付き合いをしていただけているだけでなく、他の鉄道事業者様にも積極的にアイリッジをご紹介くださっていますが、どういったところを評価してくださっているのか、改めて教えていただけますか。

「私たち鉄道事業者が思う顧客目線と同じ目線に立ってくれる」と感じています。

また、システム的なところもわかりやすく説明してもらえるので、こちらも「この情報をお出しすればこんなことができるんじゃないか」と考える機会が得られるなど、一体となって取り組めている実感があります。

アイリッジ飯野:片貝さんは理解が早くきちんとわかってくださって、こちら側の情報をお渡しするとそれを元にした新しい施策や改修案がたくさん出て来るので、私たちももっともっと情報共有していきたいと思っています。

 

困りごとやニーズを汲み取る広い視野と柔軟性で”愛される”

 

─最後に今後の展望について教えてください。また、顧客に愛されるために必要なこと、大切にしていることは何でしょうか。

運行情報を知りたいだけならSNSやWeb検索、乗換案内アプリなどもある中で、東急線アプリだからできることを強化していきたいと考えています。「グッチョイクーポン」もそうですが、「混雑の見える化」も、ここまで詳細にやっているのは東急線アプリだけだと思います。こういったものをもっと増やしていきたいですね。

ご支持いただくために気をつけていることはお客さまの声をちゃんとお聞きすること、あとはアプリ界のトレンドを敏感にキャッチアップすることでしょうか。

お客さまの声がまず大切なのはもちろんですが、直接メールをくださる方やSNSで言及してくださる方は一握りなので、視野を広げて、そこからは聞こえてこないニーズを汲み取る柔軟性も持ち続けたいと思っています。

─ご要望にお応えしてアプリ活性化につながった事例として、マスコットキャラクターの「のるるん着せ替えモード」がありましたよね。

アイコンを「のるるん」から変更したくないため旧バージョンからアプリをアップデートしないという「のるるんコアファン」のお声ですね。アプリ画面の着せ替え機能は飯野さんにご提案していただきました。機能追加後分析してみると、「のるるんモード」を搭載した次の月にダウンロード数が爆発的に伸びるという、驚きの結果となりました。飯野さんは「のるるん」のことになるとテンションが高めになるのがいいですね(笑)。

─そうなんですね(笑)。本日はありがとうございました。

 

(取材・文:下坂乃奈子/写真:松岡知美)

 

 

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