最適な顧客体験を提供するための「シナリオ設計」
最近はオムニチャネル戦略のひとつとして自社アプリを活用し、よりビジネスを成長させたいと考える方が増えています。
その一方で、せっかく作ったアプリを上手く活用できていないというお声もよく耳にします。
今回は、アプリマーケ基礎工事のひとつ「シナリオ設計」の方法をご紹介したいと思います。
「いま運用中のアプリの利用が伸びない」「利用はされているけれど期待する効果につながっていない」などのお悩みを持っている方は、この「シナリオ設計」をぜひ見直してみてください。
1. シナリオとは
ここでは、シナリオの必要性や目的についてご説明していきます。
シナリオについて既によくご存じだの方は、「2.シナリオ設計の手順」から読み始めていただければと思います。
アプリマーケティングにおけるシナリオとは、特定の行動を起こしたユーザーに対して、予め設定したアクションを返すというものです。
例えば、お買い物カートに商品を入れた状態でアプリを閉じた後、「カートに商品が残っています」などのプッシュ通知を受け取ったことはないでしょうか。
このような一連の決められた流れのことを、シナリオと呼んでいます。
なぜシナリオが必要なのか
アプリの目的(ゴール)は、購買・来店・継続利用など、企業によってさまざまです。
しかしどんなアプリであれ、そこに至るまでの道筋を詳細に考え整えることで、より多くの顧客がゴールに到達する割合を増やすことができます。
この道筋を整えるということが、シナリオを設計するということです。
しかし顧客と一口にいっても、それぞれ興味関心や生活習慣などはさまざまです。
さらに近年では、顧客の行動はオンラインとオフラインとを垣根なく行き来するようになっています。
その変化に対応するには、チャネルを超えて顧客の行動を認識し、一人ひとりに合った適切なコミュニケーションを取ることが不可欠です。
ゴールまでのシナリオを設計し、顧客一人ひとりに合わせたマーケティングを実施することで、顧客に支持される継続的なパートナーシップを築いていきましょう。
2. シナリオ設計の手順
ここからは、効果的なシナリオを作成する3つの手順をご紹介します。
シナリオ設計とは、上記の内容を具体的に考えていくことですが、ターゲットの設定を細かくすればするほど多くのシナリオを設計することになります。
今回は初めてシナリオを設計するという想定のもと、ターゲットの設定は「ユーザー状態」程度の粒度にしたいと思います。
(1) ユーザーを分類する(ターゲット設定)
まずはじめに行うことは、ターゲットを決めることです。
ユーザーを具体的にイメージすることにより、その人に届けるべきコンテンツの内容やタイミング・手段を戦略的に考えることができます。
では、店舗とECサイトとを持つ業態を例に、ユーザーをいくつかの状態に分けて考えてみましょう。
ユーザー状態の想定
- 店舗へ来店し、商品を購入したことがある顧客(店舗ユーザー)
- オンラインでのみ購入がある顧客(オンラインユーザー)
- カートに商品はいれたものの、購入に至らなかった顧客(離反ユーザー)
- かつては頻繁に利用していたが、最近はあまり利用しなくなった顧客(休眠ユーザー)
もちろん、皆さまの業態に合わせて同じような粒度で別のユーザー状態を想定していただいてもかまいません。
また、すでにペルソナを設定している場合には、それも活用するとさらに詳細なシナリオを考えることができます。
▼ペルソナ設計の詳細を知りたい方は、以下の記事もご参照下さい。
(2) ユーザーの行動を想定する(カスタマージャーニー)
続いて、上で考えたユーザーがどのような行動をとるのかというところを想定します。
これに加えて、ユーザーがアプリをダウンロードしてからサービスの利用・商品の購買に至るまで、どこで躓くのか、どんな情報を必要としているのかを、実際のデータなどを参考にしつつ、検討を重ねていきます。
考えたものは、カスタマージャーニーと呼ばれるフレームワークを利用してアウトプットしていくといいでしょう。
今回はシナリオ設計に用いますので、2-(1)で想定したユーザー状態ごとにカスタマージャーニーを作成します。
こちらもすでに自社で設定をしている場合には、それを利用していただけければと思います。
▼カスタマージャーニーの作り方については、以下の記事もご参照下さい。
(3) ユーザーへのアプローチを考える(施策想定)
最後に、ユーザー状態ごとに作ったカスタマージャーニーに合わせて、より顧客の検討度合いを高めるために必要なアプローチを考えます。
例として、冒頭のシナリオ設計図を再度ご覧ください。
店舗ユーザーに対するシナリオ設計例
①来店時に掲示物やチラシ・声掛けによって、アプリのダウンロードを促す
②アプリをダウンロード・起動してくれたら、アプリ内メッセージを利用して会員登録へつなげる
③会員登録後、アプリ内メッセージでお気に入り店舗の登録を依頼する
④お気に入り店舗を登録後、プッシュ通知で該当店舗で使えるクーポンを付与し、来店を促す
⑤来店後、購入時に声掛けをしてアプリ会員証を提示してもらう
⑥会員証にポイントを付与して、再来店へのモチベーションをさらに高める
もちろん、それぞれのアプローチに対して反応がなかった場合の対応も考える必要があります。
それがアプローチポイントにおける「NO」の部分にあたります。
興味関心やアプリを立ち上げるタイミングなどは、当然ユーザーによって異なります。
ユーザーの購買意欲を高め、検討フェーズを進めるためには、適切なコンテンツを適切なタイミングで届けるという施策の設計が重要になります。
上では店舗ユーザーに対するスタンダードなアプローチの例をお見せしましたが、他にもいろいろなアプローチの仕方が考えられます。
例えばユーザーがワンピースを購入したあとに、そのワンピースを使用したコーディネートを提案するとどうなるでしょう。
より幅広くワンピース着用を楽しんでもらうことや、コーディネート例の中から他の商品の購入を検討してもらうことができますね。
このように、それぞれの状態に沿ったマーケティング施策の想定を行っていくと、シナリオが出来上がります。
可能であればどんな検証を行うかも明確にしておくと、PDCAのサイクルを回す時に役立つでしょう。
今回はターゲットをミニマムなもので想定しました。シナリオ設計は、初めはこれくらいの粒度からスタートして問題ありません。
まずは始めることが何より大事です。慣れてきたら、データを分析しながらさらに詳細なシナリオを作成し、改善していくといいでしょう。
シナリオは、一度設計して終わりではありません。
提供するコンテンツの内容だけではなく、デザインやタイミングなどによっても反応が異なってきます。
ABテストを行い、検証と改善を続けてより愛されるアプリにしていきましょう。