顧客VOICE:本当のゴールは「動画制作」の先にあった。コミュニケーションのプロと一緒に作り上げたものとは
データやテクノロジーを活用して、様々な社会問題を解決する社会イノベーション事業を推進している、株式会社日立製作所様。
本インタビューでは、金融機関向けのチャネルソリューションの中で、利用者との「デジタル」な接点のひとつ、インターネットバンキングをご担当されている中山様と、営業店向けシステムをご担当されている秀間様、野中様にお話を伺いました。
写真左から、Qoil 木ノ根、吉田、株式会社日立製作所 全国金融システム本部 チャネルソリューション第一部 技師 野中 美希 様、同本部 チャネルソリューション第二部 主任技師 中山 雅博 様、同本部 チャネルソリューション第一部 主任技師 秀間 信弘 様、アイリッジ 冨吉、小野
プロジェクトのはじまり
──今回のプロジェクトについて、教えてください。
冨吉(アイリッジ):
2024年3月に開催された「デジタルバンキング展2024」(以下、DBX2024)に出展する際に、オンラインセミナーで使用する、3つの金融デジタルソリューションのプレゼンテーション動画と資料をプランニングして欲しいというご要望をいただきました。
オンラインセミナー以降の営業展開にもご活用いただけるよう、キーワードとなる「未来の銀行」のあるべき姿の策定から、各ソリューションが地域金融機関担当者にもたらすベネフィット・未来の姿の可視化、地域金融機関担当者の方々の態度変容を促すために必要なコミュニケーションの種類や順番をご提案し、採用いただいた流れとなります。
日立製作所様とのお付き合いは、2021年に個人向けインターネットバンキングアプリのデザイン改善をご支援させていただいたところから始まっていて、アイリッジグループ全体として何が出来るのかというところについては、当初よりお伝えしていました。
2023年4月からアイリッジに、グループ会社のQoilと連携して企業の課題解決支援を行う「プロデュース部」が新設されたタイミングで、今回のプロジェクトのお話をいただき、アイリッジグループでのご提案に至りました。
詳細はこちらのプレスリリースもご参考ください。
https://iridge.jp/news/202404/35947/
──今回ツール制作を支援させていただいた、金融デジタルソリューションについて教えてください。
秀間様(日立):
今回ツール制作の対象だったのは、3つのソリューションです。
銀行への来店頻度が減少し、非対面のコミュニケーションが加速しているという環境背景の中で、さらにデジタル領域を広げていかないといけないということでサービス提供が始まっています。それぞれのソリューションに以下のような特長があります。
- Branch in Mobile(ブランチインモバイル)
オンラインで対応できる業務を増やし、窓口業務を効率化・省人化することで、人材・資金・時間の余力を捻出します。これにより、高付加価値なサービス創出を可能にし、地域金融機関のこれからの競争力向上をサポートするサービスです。
さらに、お客様は、いつでもどこでも、銀行手続きが可能になります。
多くの金融機関へのシステム導入がある日立のノウハウを活かした、使いやすさが特長のひとつです。
- 法人向けデジタルチャネル統合プラットフォーム
金融機関の取引先企業のDX化を促進する統合プラットフォームです。
金融機関は本プラットフォームを通じてユーザビリティに優れた各種デジタルサービスを取引先企業に提供することができます。そして各種デジタルサービスにより取引先企業のDX化を促進し、事務効率化やビジネスマッチングなどの経営支援を強力にサポートします。
インタビュー、ユーザーテストの結果にもとづき、利用者目線での情報配置を行うとともに、デジタルへの抵抗や不安を持つユーザーにも配慮した、使いやすい画面が特長です。
- オープンAPI管理サービス
金融機関以外の一般の事業者が金融サービスを提供できるようにするためのサービスです。金融機関と外部システムが柔軟に連携することで、金融サービスに求められる高い安全性を維持しつつ、オープンイノベーションを推進する動きが始まっています。
現在、銀行の店頭を利用する方が2割、残り8割はインターネットバンキングなどを利用しています。利用者との接点が自由化していく中で、金融サービスの提供元が必ずしも「銀行」でなくてもよいという時代が、もう近くまできていると捉えています。今後さらにオープンAPIの活用が進み、金融と非金融の接点が増え、社会課題の解決につながる様々なサービスが生まれる可能性があります。
”堅さ”からの脱却と、ソリューション拡販のために選んだチャレンジ
──ご依頼にあたって貴社で抱えていた課題感について教えてください。
野中様(日立):
以前より、我々の会社は、サービスをアピールする表現の仕方や伝え方が“堅い”という自覚がありました。しかし、どうすればお客様である地域金融機関様向けに刺さるのか、という解がなかなか見つけられず、そこが課題となっていました。
今までのサービス紹介方法は、パワーポイントで資料を作って一対一でお話をするしかなかったのですが、今後のソリューションの拡販にも繋げるために、今までと全然違うことにチャレンジしてみようということで、「DBX2024」という対外的なアピールのチャンスがあるタイミングで、動画制作をお願いしました。
中山様(日立):
動画であれば、ホームページやYouTubeなどの媒体でも、効率的にサービス訴求が行えるという狙いもありました。
──アイリッジグループをお選びいただいた理由と背景について教えてください。
中山様(日立):
最初にお会いした時に、グループ会社であるQoilさんのご紹介もいただいていました。アイリッジさんが、アプリ開発だけではなくグロースハックに関するノウハウをお持ちであること、Qoilさんがリアル・デジタル両方の領域でのプロモーション活動を得意とされていること、グループでそういった強みを持っている、というところが選定の大きなポイントになりました。
すでにご支援いただいている知識をベースに、プロモーションの分野もお任せできるのであれば、まずお声掛けしないといけないと思いました。
Qoilさんに実際にお会いして、我々にはないものを持っているな、と感じたことも決め手のひとつかもしれません!
本当のゴールは「動画制作」の先にある
──アイリッジグループに質問です。今回のご提案にあたって大切にしたポイント、こだわった点を教えてください。
木ノ根(Qoil):
今期から新しくコミュニケーションデザインという部署を立ち上げました。
我々のビジネスは、基本的には何かを納品することがゴールになりがちですが、本当のゴールはその先にいるお客様の認識や態度を動かすことだと考えています。
作って欲しいと言われたものを作るだけではなく、「なぜそれをやるのか」を中心に考えていくチームが組成されていて、アイリッジのプロデュース部と連携して様々なことを行う、グループとしての今年からの取り組みとなります。
今回のご依頼は動画制作でしたが、その先にいるお客様(今回のプロジェクトでは地方銀行様)が日立様のプロダクトをどうして欲しいのかというところをゴールに、何をやればいいのか、誰に何を伝えるのか、どうやって伝えればいいのかを考えることが、最終的にプロジェクトのゴールにつながるという考えで進めていました。
なので「展示会はどのような方が見に来るのか」「その方に対してどんなアプローチをすれば次へ繋がるのか」というようなところを意識的にたくさんヒアリングさせていただきましたし、ただ作るだけではない、一緒に戦うパートナーとしてやらせてもらうという意識を大切にしていました。
中山様(日立):
はい、とても印象に残っています。DBX2024に向けた動画を制作するというプロジェクトが始まった時に、「どんな人が来場するのか」「何をアピールしたいのか」などをヒアリングしてもらってうまく整理ができたのかなと感じました。
私は自社サービスには詳しいですが、外からどう見られるのか、外に向けてどうアピールすべきなのか、そのあたりは随分参考になったと感じています。きちんと整理することができたのがよかったです。
秀間様(日立):
アウトプットのイメージがない中でお話していましたが、Qoilさんと打ち合わせを重ねることで、金融機関様への伝え方も納得して整理できましたし、その先にいる利用者の意識や行動を変えるという意識があったからこそのあの議論だったのだな、と今、理解しました。(一同笑い)
吉田(Qoil):
一般的に動画制作の依頼があれば、「どんな製品なのか」「どこが特徴なのか」をヒアリングして、それをどう形にできるかを考えます。
しかしそれだと、伝える側が伝えたいことだけで、受け取る側が欲しいかどうかが考えられていません。そこを考えるのが、我々の仕事だと思っています。
野中様(日立):
先ほど木ノ根さんのお話でありましたが、初期の打ち合わせから、パートナーとして考えてくれているんだなという気持ちが伝わってきました!
私達もお客様のためにソリューションを提供していますが、やはりどうしても自分達のソリューションを売りたい気持ちが先に立ってしまっていました。
諸々を整理してもらいながら打ち合わせを進める中で、自分は本当に顧客目線に立っているかということを考えさせられるくらい、私達と同じ立場で考えてくれていると感じました。
──たくさんのお褒めのお言葉、ありがとうございます。嬉しい限りですね。
小野(アイリッジ):
ご依頼から納品まで2ヶ月もないくらいの、非常にタイトなスケジュールだったので、期日までに仕上げられるのかというのが大変だったポイントですね。
日立さん側のご協力があったからこそ、無事に納品までできたと思っています。
中山様(日立):
あれはもう、小野さんの強烈なスケジュール管理があったからこそでしたよ。(一同笑い)
小野以外:
すごいリマインドでしたね…!笑
そこからやってくれるんだ!という新鮮な気づき
──今回のお取り組みを通して、貴社メンバーの皆様にとって新たな気付きを感じたことがありましたら教えてください。
中山様(日立):
プロジェクトが始動する前は、動画にすべきシナリオや、何を言いたいのかということを、こちらであらかじめ用意しておく必要があるのかなと思っていました。実際に、初回の打ち合わせで「何を訴えましょうか?相手はどなたですか?」という整理から入ってもらえたことは新鮮な気付きを感じました。
野中様(日立):
何を動画にすべきか、どこは静止画でいいのか、というお話は自分達ではあまり考えていなかった部分で、「何のために動画を作るのか」というところを議論できたことがよかったです。
中山様(日立):
関連性の低い3つのソリューションを、地域が抱える課題に対してそれぞれのソリューションで近い未来こんなことが実現できます、というまとめ方ができたことがすごいなと思いました。動画コンテンツでこのようなアプローチができるということも、新たに気づきがあったポイントです。
──「DBX2024」での金融機関様からの反応はいかがでしたか。
野中様(日立):
納品いただいた動画や資料は、すでに実際の提案活動でも使用し始めています!
中山様(日立):
ちょうど先日、とある銀行さんにご提案する機会があったので、今回制作いただいた法人ポータルの動画をお見せしたんです。
法人ポータル自体に様々な最終目標が考えられるので、銀行として何をゴールにするかを悩んでおられたんですけど、動画でイメージをお伝えできたことで、「これを経営層に伝えれば、まさにこのままいけるんじゃないか」と言うほど納得していただけました。
改めて、映像でイメージをお伝えできることが有用であると思えました。
──社内での反応はいかがでしたか。
中山様(日立):
動画に出演していたね、とよく言われます(笑)
おそらくですけど、ソリューション部門と全国に点在する営業部門のコミュニケーションツールとして、そしてそこから先の金融機関様に向けてご提案がしやすくなる一助にはなるんじゃないかなと思っています。
秀間様(日立):
ご提案前のつかみとしても有効なツールだと思いますし、今後の活用の幅も広がりそうだと可能性を感じています!
自社製品のプロではない、外部目線を入れることで得られたもの
──全体を通して、今回の取り組みに対するアイリッジグループの対応や進め方はいかがでしたか。
中山様(日立):
満足度100点じゃないですかね。何を訴えたいかというところから始まって、よくこの短い期間でまとめてくれたなと。
秀間様(日立):
本当にアウトプットのイメージもないところから議論し始めて、打ち合わせ中に「これ本当に完成するのかな?」と思っていた部分もありました(笑)
スケジュールが短い中で、こちらのイメージを汲み取って落とし込んでくれて、いつまでに何を決めなきゃいけないというスケジュール管理含め、スピード感持って対応してもらいました。そういった意味で、私も100点かなと思います。
吉田(Qoil):
これ強調して社長に送っておいて!(一同笑い)
中山様(日立):
動画コンテンツは当然満足していて、さらにサービス説明のパワーポイント資料もお願いしてよかったなと思いました。
我々が作成すると、目線がどうしても自分達になっていて、「こちらが説明したい資料」になるんです。金融機関様向けにどう伝えるべきか、わからなかった部分がありました。
もちろん最終的に修正は加えましたが、アイリッジグループに考えていただいた「何を伝えるべきか」というところを軸に作成できたことがよかったと思っています。
野中様(日立):
自分では考え出せないような、キャッチーなワードを散りばめていただいたことで、かなり伝わりやすくなったんじゃないかなと感じました。
吉田(Qoil):
そういったワードは、「詳しくない」からこそ書けるところがあります。詳しすぎると難しい言葉を使ってしまったりするので。
今回は投影する資料だったので、できるだけ文字は少なく済むように調整しましたね。
小野(アイリッジ):
2時間程度の打ち合わせを初回から数回、対面で行うことにこだわらせてもらったからこそ、後半のスピード感を上げられたというところもあるかなと思います。
秀間様(日立):
最初のうちに対面で意見のすり合わせができていたのは、かなり大きなポイントでしたね。わからないところはホワイトボードを活用して議論したりして、リモートだと伝わりづらい部分も対面だったからこそクリアになったのかな、と。
お互いの強みや知見を組み合わせて、今後の取り組みを進めたい
──今後、アイリッジグループに期待したいことはありますか。また、今後の両社の取り組みの可能性について教えてください。
中山様(日立):
日立は金融機関様の基幹システムや金融決済業務は行いますが、スマホアプリのソリューションは持っていませんし、実績やノウハウもありません。スマホアプリは今後絶対に外せないチャネルのひとつだと思っているので、弊社についての理解がベースにある上で、お互いの強みや知見を組み合わせて、取り組みを進めて行けたらいいなと考えています。
銀行サービスの提供にとどまらず、その地域を活性化させたいという思いを持った地方銀行様向けに、「さるぼぼコイン」のようなアプリ実績があることも、アイリッジグループの強みなのでは、と感じています。
冨吉(アイリッジ):
アプリ開発領域はもちろんのこと、今回のプロジェクトのようにそれ以外の領域においてもご支援が可能なので、新しいことにチャレンジしていきながら業界全体を盛り上げていけるようにしていきたいと思っています。
──お忙しい中、たくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。今後もアイリッジグループを宜しくお願いします!
(取材・文:松岡知美、写真:浅野智洋)