マイクロインタラクションでユーザー体験を最適化!効果・設計ポイントを徹底解説
Webサイトやアプリを操作しているとき、「いいね」ボタンが弾けたり、ローディング中にアニメーションが表示されたりといった細かな演出に気づいたことはありませんか?これらはすべて「マイクロインタラクション」と呼ばれるデザイン要素で、ユーザーの行動に対する即時の反応を通じて、操作性や満足感を高める役割を担っています。シンプルながらも大きな影響を与えるマイクロインタラクションは、近年UI/UX設計における重要な要素として注目されています。
そこで今回は、マイクロインタラクションの定義や構成要素、活用事例、実装方法、設計のポイントまでを徹底解説します。Web制作やアプリ開発に携わる方は、ぜひ参考にしてみてください。
マイクロインタラクションとは?
マイクロインタラクションとは、ユーザーが行ったタスクに対してシステム・アプリが処理を行い、その結果をユーザーにフィードバックすることです。マイクロは最小単位、インタラクションは「相互作用」を意味する単語であり、一つひとつの動作から生まれる小さな相互作用を指します。
例えばSNSの投稿に対して「いいね」を押すと画面上でハートがピンクに色づいたり、ECサイトで気に入った商品をかごに入れた際に、カートのアイコンが飛び出して数字が表示されたりするなどです。このような効果はすべてマイクロインタラクションになります。
マイクロインタラクションにはアニメーションを用いることが多いですが、だからといって必ずアニメーションを使わなくてはいけないというわけではありません。しかし、単なる表記の切り替えではわかりづらく変わったかどうか判断しにくい部分もあることから、わかりやすくするためにもアニメーションが用いられることが多いです。
UI/UXにおけるマイクロインタラクションの役割
UI/UXデザインでマイクロインタラクションを取り入れる理由に、ユーザーが利用する際に感じる不安を解消できることが挙げられます。例えばPCの電源ボタンを押すと光りますが、もし光らずに起動もしなかった場合、単に長押しが不十分だったのか、それとも故障してしまったのかが判断しづらいです。SNSなどで「いいね」を押しても色がつかなければ、本当に「いいね」を押せたのか、相手にきちんと伝わっているだろうかと不安になってしまう方もいるはずです。
マイクロインタラクションを取り入れることで、ユーザーに安心感を持って製品・サービスを利用してもらえるようになります。
マイクロインタラクションの構成要素
マイクロインタラクションを取り入れるためには、以下4つの構成要素が必要となります。
- トリガー(Trigger)
- ルール(Rules)
- フィードバック(Feedback)
- ループとモード(Loops & Modes)
各構成要素の特徴について解説します。
トリガー(Trigger)
トリガーは、ユーザーに対してアクションを起こさせるための要素であり、気づきを与えるためのものです。例えばアプリを初めて使用するユーザーは、まず何を見ればよいのか、どこから始めればよいのかがわからない状況にあります。そのため、トリガーの要素を含めることで、ユーザーは何をすればよいのかがわかり、そこからアプリの使用にも慣れていくことができます。
具体的には、Xのタイムライン上部に「新しいポストがあります」と表示されたり、メッセージが届いた際に通知音が鳴ったりするのがトリガーの要素です。
ルール(Rules)
ルールは、トリガーから引き起こされた一連の動作・処理を定義づけたものです。トリガーからユーザーにアクションを起こさせた際に、どのような処理を行い、どんなことができるのかを決めます。
また、エラーが発生するリスクを最小限に抑えるために、ユーザーへ通知することもルールに含まれています。例えばスマホの音量を調整しているときに、一定レベル以上の音量に設定しようとすると「大音量で長時間聴き続けると、聴力を損なう恐れがあります」といった警告が表示される場合があります。このように、ユーザーが起こすアクションに対してリスクを抑えるのもルールの役割です。
フィードバック(Feedback)
フィードバックは、ユーザーの操作によってどんな処理が行われたのか、どんな結果になったのか、などをユーザーにわかりやすく示す要素です。このフィードバックではユーザーの視覚や聴覚、触覚など五感の一部を使ってユーザーが理解できるようにします。
例えばスマートフォンで消音に設定した際の軽い振動や、ログインする際の入力フォームで間違えてしまった際の横揺れなどはフィードバックの要素になります。
ループとモード(Loops & Modes)
ユーザーが起こす行動に合わせて大きなルールを決めておき、その動作を繰り返し行う要素を「ループ」、大きなルールが複数条件分岐する場合の要素を「モード」といいます。このループとモードをうまく取り入れれば、頻繁にアプリやシステムなどを利用するきっかけを作れます。
例えば、毎日の天気を確認するために自分が住んでいる周辺の地域を選択したり、Facebookを利用していて1年経過すると1年間を振り返れる動画を作って通知してくれたりする要素などです。
マイクロインタラクションがもたらす効果
マイクロインタラクションを取り入れることで、具体的にどのような効果がもたらされるのでしょうか?
ユーザーの操作をわかりやすくする
マイクロインタラクションの効果として、ユーザーの操作をわかりやすくするという点が挙げられます。例えばメールを送信すると「送信しました」、SNSなら「投稿しました」などが表示されますが、これを見てユーザーは「ちゃんとメールが送信できている」「SNSに投稿できている」ことを確認することが可能です。
ユーザーが今どんなアクションをしていて、自身がその行動を理解できるようにすることで、操作時の使いやすさを向上させられるでしょう。
ユーザーのエンゲージメント向上につながる
アニメーションなどで面白い動きや隠れた機能を取り入れることで、ユーザーのエンゲージメント向上も期待できます。例えば、Facebookを利用していて投稿に「いいね」を押す際に、「いいね」ボタンを長押しすると、いつもより大きな「いいね」サインが送れます。こういった面白い機能や知っている人は知っているような隠れた機能があると、ユーザーは製品やサービス自体にも好感が持てるようになるでしょう。
ユーザーから好感を持ってもらえるようになると、愛着も抱くようになり、長く製品やサービスを使ってもらえる可能性が高まります。
タスクの進行状況やエラーを適切に伝えられる
アプリやシステムのロード画面・ダウンロード画面などは、ユーザーは手持ち無沙汰になってしまい、あまり長すぎると離脱のリスクが高まってしまいます。こうした離脱リスクを回避するためにもマイクロインタラクションが活用されています。例えばダウンロード画面で「今どれくらいダウンロードが進んでいるか」といった進捗状況が表示されていると、ユーザーもあとどれくらいでダウンロードが終わるのか明確になり、不安も和らぐでしょう。
また、ユーザーのアクションに対してエラーメッセージを表示させることで、何をしたらダメなのかユーザーにも伝わりやすくなります。エラー通知はメッセージだけでなく、振動を加えることでも伝えることが可能です。
ブランドの個性を強調できる
マイクロインタラクションはUI/UXデザインにおいてユーザーに理解してもらうための重要な役割を持っていますが、それに加えてデザインの自由度が高いことから、ブランドの個性を強調させることもできます。例えばユーザーに楽しんで使用してもらうことを目的としているなら、面白い要素をマイクロインタラクションで取り入れても問題ありません。
ユーザーにわかりやすいデザインである必要はあるものの、ブランドの個性を強調したい場合もマイクロインタラクションが活躍してくれるでしょう。
マイクロインタラクションの具体的な利用タイミング
マイクロインタラクションはさまざまな効果をもたらしてくれるものの、適切な場面で活用されないとかえって邪魔になったり、サイトを重くしてしまったりすることで、ユーザーのストレスにつながる恐れがあります。こうした事態を防ぐためにも、具体的な利用タイミングについて知っておきましょう。
①操作開始時(ユーザーがアクションを起こした瞬間)
利用するタイミングの一つに、ユーザーが操作を開始したタイミングやアクションを起こした瞬間があります。このタイミングでマイクロインタラクションの要素が含まれると、ユーザーは今行ったことに対する確認ができ、安心感も生まれやすいです。
すべての行動に対して反応を示すものが必要というわけではないものの、重要度の高いタイミングになるため、積極的に取り入れるのがおすすめです。
活用できるマイクロインタラクション
操作の開始時に活用できるのは、以下の要素です。
- ボタンのアニメーション(押したときに色が変化する、影が追加されるなど)
- ホバーエフェクト(マウスカーソルを当てるとボタンの色・サイズが変化するなど)
- フォーカスハイライト(キーボードを操作したときに選択中の項目が強調されるなど)
- 音声フィードバック(音声入力を始めると「ピッ」という音が鳴るなど)
システムやアプリ上などでよく見られるのは、ホバーエフェクトです。該当の箇所にマウスカーソルを持っていくだけでボタンの色が変わったり、アイコンや文字のサイズが少し大きくなったりします。
②操作中(ユーザーが作業を進めている最中)
ユーザーがシステムやアプリなどを操作しているタイミングも、マイクロインタラクションを導入するタイミングとして適切です。例えばXにポストを投稿する文章を作成する際に、140文字を超えると赤字で表示されるようになり、わざわざ文字数を数えなくても超えているかどうかが判断できます。
操作中のマイクロインタラクションは、ユーザーが確認する手間を省くうえでも重要な役割を担っているのです。
活用できるマイクロインタラクション
操作中に活用できるのは、以下の要素です。
- フォーム入力のフィードバック(入力が正しければ緑色、間違っていたら赤色になる)
- プル・トゥ・リフレッシュ(スマホで画面を下に引っ張ることでページが更新され、グルグル回るアイコンが表示される)
- フォーカスハイライト(入力中のテキストボックスが強調される)
- 進捗インジケーター(フォーム送信中にローディングの進捗を示すバーを表示する)
操作中での活用となるため、基本的にはフォーム入力に取り入れられることが多いですが、プル・トゥ・リフレッシュや進捗インジケーターなど、操作する中で現在の状況をユーザーに示す際にも活用されます。
③操作完了時(ユーザーのアクションが確定した瞬間)
ユーザーの操作がすべて完了したタイミングやどんなアクションを起こすのか確定した瞬間も、マイクロインタラクションを取り入れるタイミングといえます。本当にそのアクションが行われたかどうかが確認できるため、ユーザーの不安も解消できるでしょう。ユーザーのアクションが確定したタイミングでシステムの処理をフィードバックさせれば、ユーザーとの双方向でコミュニケーションが取れるようになります。
活用できるマイクロインタラクション
操作が完了したタイミングやユーザーのアクションが確定した瞬間に活用できるのは、以下の要素です。
- サクセス&エラーメッセージ(「送信完了」「パスワードが間違っています」)
- 成功アニメーション(チェックマークが浮かび上がる)
- 音声フィードバック(「送信されました」などの確認音)
- 触覚フィードバック(ハプティックフィードバック)(長押しで振動)
メールなどで送信に成功したのか、それともエラーで失敗したのかを示すメッセージは、「メールを送信する」という操作を完了したタイミングで挿入することになります。このようなメッセージや通知は視覚的な表現となりますが、音声によるものや長押しによる振動で確認できるものもあります。
④情報の表示・更新時(システムの状態が変化したとき)
導入するタイミングとして、Webサイトやシステム・アプリの状態が変化するタイミングも適しています。システムの状態が変化するタイミングは、ローディングなどの影響を受けやすく、場合によっては途中でユーザーが離脱する可能性もあります。そのため、ユーザーを飽きさせないためにも、情報の表示や更新時などはマイクロインタラクションを活用するのがおすすめです。
活用できるマイクロインタラクション
情報の表示や更新に使える要素は以下のとおりです。
- ローディングアニメーション(サークルやスクエアなど、ページの読み込み中にローディングアイコンを表示)
- トースト通知(「Wi-Fiに接続されました」などのポップアップ通知)
- 通知バッジ(新着メッセージがあると赤いバッジが表示されるなど)
例えばローディングアニメーションでは、くるくると回るサークルやドットサークル、スクエアなどのアイコンを表示するケースが多いです。また、トースト通知は少し表示されてから自動で消える設定となっており、アプリやWebサイトなどを見ているときも邪魔にならず、通知の内容だけを確認できます。
⑤インタラクションの誘導・補助(ユーザーの行動を促す)
ユーザーのインタラクションを誘導・補助したいタイミングは、マイクロインタラクションを活用することで行動を促せます。例えば自社サイトをただ閲覧するよりも、ユーザーの行動を促して操作してもらった方が記憶にも残りやすくなります。ユーザーにどのような行動を取ってほしいかを考えて、うまく誘導できるマイクロインタラクションを取り入れてみましょう。
活用できるマイクロインタラクション
ユーザーの行動を促す際に活用できるのは、以下のとおりです。
- スクロール時のアニメーション(下にスクロールすると画像・動画などがフェードインする)
- いいね!アニメーション(ハートが弾けるように表示される)
- ゲーミフィケーション要素(レベルアップ時のアニメーションを追加する)
ユーザーの行動を促すためには、ユーザーに興味を持ってもらったり楽しんでもらったりすることが大切です。例えばWebサイトにスクロール時にアニメーションを追加すれば、最初は何も表示されていないものの、下にスクロールすることでオフィスの様子を移した動画やロゴアイコン、サイト内のメニューなどを表示させることが可能です。
⑥エラーや注意喚起(ユーザーに警告を伝える)
ユーザーの行動・アクションに対して警告を伝えたい場合にも、マイクロインタラクションは活用できます。ユーザーの行動やアクションはすべてが正しいわけではありません。しかし、警告を伝えないとかえってユーザーはストレスを感じてしまう可能性があります。そのため、エラーや注意喚起のためにマイクロインタラクションを挿入するとよいでしょう。
活用できるマイクロインタラクション
エラーや注意喚起の場面で取り入れられるのは、以下の要素です。
- フォーム入力エラー(誤入力時に赤い枠と警告メッセージを表示)
- バイブレーションフィードバック(無効な操作があったときに振動させる)
- トースト通知(「インターネット接続がありません」などのポップアップ通知)
フォーム入力エラーがあると、ユーザーは具体的にどこを間違えたのか、何を修正すればよいのかがわかり、回答の不備を減らせます。また、情報の表示や更新の場面で活用できるトースト通知は、エラーや注意喚起をする際にもおすすめです。
⑦アクセシビリティ対応(ユーザーの使いやすさを向上させる)
アクセシビリティとは、近づきやすさ・利用しやすさなどを表す言葉です。子どもや高齢者、障がいを持つ人など、誰もが利用できるWebサイト・アプリにすることでアクセシビリティに対応できているといえます。Webサイトやアプリをアクセシビリティ対応したい場合にも、マイクロインタラクションが役立ちます。
活用できるマイクロインタラクション
アクセシビリティ対応に用いられているのは、以下の要素です。
- フォーカスハイライト(キーボード操作で現在選択中の要素を強調させる)
- 音声フィードバック(視覚障害者向けに読み上げ機能を追加)
- 触覚フィードバック(操作確定時の振動で確認できる)
目が見えない、または見えにくい人にとって、音声フィードバックによる読み上げ機能の追加は、どのようなことが書かれているかを理解するために必要な機能といえます。また、音声だけでなく、触った感覚でも振動などで操作が確定したことを確認することは可能です。
マイクロインタラクションの設計ポイント
実際にマイクロインタラクションを取り入れる場合、どのような点を押さえながら設計すればよいのでしょうか?最後に、マイクロインタラクションの設計ポイントを解説します。
シンプルなデザインにする
ユーザーの目を引くことは重要となってくるものの、あまりにも目立ちすぎたり複雑だったりすると、かえって混乱を招いてしまう恐れがあります。
また、たくさんの要素を加えすぎてしまうと多くのデータ通信を必要となってしまいます。データ通信量が多く、読み込み速度が遅くなってしまうと検索エンジンからの評価が下がってしまうことから、シンプルなデザインに設計して極力データ通信量がかからないようにすることが大切です。
ユーザーの期待に沿った動きにする
できるだけ個性を強調させようとして、ユーザーが思い描いたとおりの動きをしなかった場合、ユーザー側はストレスを感じやすく離脱リスクが高まってしまいます。例えばロード画面でバーが表示されて100%になったにも関わらず、また別のバーが表示された場合、ユーザーは「100%で終わりじゃないのか」と裏切られたような気分になります。
ユーザーがストレスフリーでサイトやアプリを利用できるように、できるだけユーザーの期待に添った動きとなるように設計しましょう。
視覚・聴覚・触覚を活用する
マイクロインタラクションの中でも特にフィードバックでは、視覚による確認だけでなく聴覚や触覚なども活用した要素も追加することで、よりユーザーにわかりやすく情報を伝えることが可能です。目が見えない、または見えにくい人も、聴覚や触覚を使って確認できれば画面が見えていなくても自分が正しく操作できたかがわかります。
また、目が見えている人でも視覚だけだと見逃す場合があるため、音や感触で伝えられるようにするのがおすすめです。
一貫性のあるデザインを維持する
ユーザーを飽きさせず、楽しませることも重要な役割となっていますが、これを意識しすぎると全体的に統一感のないアニメーションを使ってしまう場合があります。なるべく違ったものを取り入れて飽きさせないようにするためです。
しかし、一貫性がないとサイト全体がごちゃごちゃとした雰囲気になってしまい、ユーザーが理解できない部分も出てきてしまうかもしれません。こうした事態を防ぐために、マイクロインタラクションを取り入れるときは一貫性のあるデザインで統一することが大切です。
必要に応じて制御できるようにする
マイクロインタラクションを取り入れるうえで、必要に応じて制御できるようにすることも大切です。例えばWebサイトにユーザーの行動を促そうと、Webサイトにスクロールをすると動画や音声が流れ始める場合もあります。動画自体を流すことはできても、見ている人の中には突然音声が流れて困る人も多いです。
このような事態を回避してユーザビリティを高めるためにも、ユーザーが自分で制御できるようにアニメーションの停止ボタンなどを設けておくとよいでしょう。
まとめ:マイクロインタラクションを活用し、ユーザビリティの向上を図ろう
マイクロインタラクションは、ユーザーが行ったアクションに対する反応であり、本当に行ったかどうかを確認する際にも用いられます。快適にサイトやアプリを利用するために用いられますが、気をつけて取り入れないと逆に不快感を与えてしまいかねません。今回紹介したポイントなども押さえつつ、マイクロインタラクションを活用してユーザビリティの向上を図りましょう。
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