内製化とは?メリット・デメリット・ポイント等を解説
企業成長のために取り組む経営手法はさまざまなものがありますが、そのうちの1つが「業務の内製化」です。
内製化とは業務を外部に委託することをやめ、自社内でその作業を完結させることをいいます。
コストの削減や業務効率化など多くのメリットがあるため、多くの企業が取り組んでいます。
本記事では、内製化の意味や目的を解説するとともに、企業における内製化のメリット・デメリットをご紹介。
内製化に取り組む際のポイントや成功事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
内製化とは
内製化とは、特定の業務を外部に委託することをやめ、自社内でその作業を完結させること。
自社内の設備や人材などを使って業務を遂行することで、コストの削減や業務効率化などのさまざまなメリットがあります。
内製化の対義語は「外製化」で、いわゆるアウトソーシングやフリーランスへの業務委託などがこれに該当します。
これまで、非コア業務(事務作業のように、その業務自体からは直接利益が生まれないものの、企業活動の根幹となるコア業務のために必要な業務)や専門的な知識を要する業務は、外部に委託するという傾向がありました。
しかし、必ずしも外部委託が自社にメリットをもたらし続けるとは限りません。
中には内製化のほうがメリットが多いケースもあり、外製化から内製化に切り替える企業も見受けられます。
内製化の目的
内製化の目的は、大きく分けて「コスト削減」と「業務効率化」の2つです。
外製化には専門知識を持ったプロに業務を委託できるというメリットがありますが、外部業者は自社内の業務や環境などを理解しているわけではありません。
そのため、自社の状況に応じて臨機応変に対応することが難しく、場合によっては手戻りや社内での再作業などが発生する可能性があります。
結果的に、外製化したことで業務の効率が悪くなってしまうこともあるのです。
また、業務を外部に委託するということは、その分コストが発生します。
一見安いように見える料金プランでも、イレギュラー対応などの業務が発生するとその分オプションを追加することになり、結果として社内の人件費より高額になるケースもあるでしょう。
外製化によるこれらの問題を解決することが、内製化を行う目的です。
内製化のメリット
業務を内製化することによるメリットとしては、以下の5点が挙げられます。
- コスト削減につながる
- スピーディーな対応が可能になる
- 社内に業務に関する知識やノウハウが蓄積される
- イレギュラーに対して柔軟な対応ができる
- セキュリティが向上する
それぞれ詳しく解説していきましょう。
メリット1 コスト削減につながる
業務を内製化することによるメリットの1つ目は、業務にかかるコストを削減できるということです。
先ほども解説したように、外部業者に業務を発注すると、その分コストが発生します。
特にシステム開発・運用のようなIT関連業務など専門知識を必要とする業務は高額なことが多く、実際にアウトソーシング代が財務状況を圧迫している企業も少なくありません。
内製化によってこれらの業務を社内で完結することができれば、このコストをゼロにすることが可能です。
正確には人件費などの社内コストはかかっていますが、外製化していたときの利益分は回収できるケースも少なくないでしょう。
メリット2 スピーディーな対応が可能になる
業務1つ1つに対してスピーディーな対応が可能になるのも、内製化に取り組むメリットの1つです。
外製化している場合、業務に修正や変更が生じると、契約内容やルールに則って情報共有する必要があります。
たった1つの作業の確認に数日間かかるケースも珍しくなく、どうしても業務スピードに影響が出てしまうのです。
一方、内製化していればすべての業務が社内で進行しているため、修正や変更の確認は簡単に行えます。
外製化と比べ、作業時間を大幅に短縮できるでしょう。
外部の業者と契約したり内容の調整を行ったりする時間も削減できるため、プロジェクトの初動を早められるのもメリットです。
メリット3 社内に業務に関する知識やノウハウが蓄積される
社内に業務に関する知識やノウハウを蓄積できることも、内製化のメリットといえるでしょう。
外製化には、専門的な知識やノウハウを要する業務でも任せられたり、進行していく中で発生した課題を解決してくれたりするなどのメリットがあります。
しかしそれは言い換えると「他人任せ」になってしまっている状況で、いつまで経っても社内に知識やノウハウが蓄積されません。
外部業者との契約が終われば業務がブラックボックス化(※)してしまう可能性もあります。
業務を内製化すると社内メンバーが業務に携わることになるため、ブラックボックス化を防ぎ、社内に業務に関する知識やノウハウを蓄積することができるようになります。
※「ブラックボックス化」
ブラックボックス(黒い箱)の中で業務が行われているかのように詳細が不透明になり、社内メンバーでさえも業務遂行のプロセスや詳細がわからなくなってしまうことを意味しています。
メリット4 イレギュラーに対して柔軟な対応ができる
業務やプロジェクトを進行していると、イレギュラーな対応が必要になる場面も出てくるでしょう。
そんなときに柔軟な対応ができるのも、内製化のメリットです。
特定の業務を外部に委託する場合、依頼内容や進め方、スケジュールなどは予め打ち合わせで決めることになります。
イレギュラーへの対応はできないか、できる場合でもオプション費用が必要になるでしょう。
一方、内製化している場合はイレギュラーへの対応は難しくありません。
その時々の状況に合わせて業務フローを最適化することができるため、業務の質を落とさずに進行したり、市場変化に合わせて臨機応変に対応できたりします。
結果として、自社の市場価値の向上につながるでしょう。
メリット5 セキュリティが向上する
内製化は、セキュリティ面でもメリットをもたらします。
外製化の場合、業務に関する情報を外部に持ち出す必要があります。
外部業者と秘密保持契約(NDA)を結んでいるとはいえ、情報漏えいなどのリスクはつきまとうでしょう。
もちろん内製化したからといってリスクが完全にゼロになるわけではないですが、外製化と比べればそのリスクはかなり軽減できます。
特に、最近は巧妙なサイバー攻撃によって企業の機密情報が漏れてしまう事件も少なくありません。
セキュリティ対策の重要性が高まるとともに、内製化などによってそもそも情報をできるだけ外部に持ち出さないことも重要になっていくでしょう。
情報漏えい以外にも、さまざまなリスクに対してリスクマネジメントを社内で行えるのも、内製化のメリットです。
内製化のデメリット
内製化にはメリットが多い一方、以下のようなデメリットもあります。
- 人材を育成するための時間やコストが必要
- 設備に対する投資や運用コストが必要
- コストに対する意識が低下するおそれがある
それぞれ詳しく解説していきます。
デメリット1 人材を育成するための時間やコストが必要
まずは、人材を育成するための時間やコストが必要になるという点です。
長い期間外製化が続いていた場合、社内にその業務に対する知識やノウハウを持っている社員がいないケースがほとんどです。
そのため、多くの場合はゼロから人材を育成していく必要があります。
特に、外製化している業務は専門的な知識やノウハウを必要とすることが多いです。
その分、育成に長い時間や高額なコストが必要になるでしょう。
場合によっては、外部の研修を利用したり新しい人材を採用したりする必要があるかもしれません。
しかし、業務に精通する人材を育成できれば、社内に知識やノウハウを蓄積していくことができます。
長い目で見て内製化によるメリットのほうが多い場合は、ときには目の前の工数やコストを惜しまないことも大切です。
デメリット2 設備に対する投資や運用コストが必要
人材の育成以外にも、設備に対する投資や運用コストが必要になることも内製化によるデメリットの1つです。
例えば、これまで外製化していたシステム開発を内製化する場合、パソコンやサーバー、開発に必要なソフトウェアやツールなどが必要になります。
外製化の場合はそれらの費用は外注費に含まれているため、一見すると内製化のほうがコストがかかると感じる方も多いでしょう。
また、外製化と内製化では、コストのかかり方も違います。
外製化の場合は必要なときに必要な分だけ外注コストが発生していたのに対し、内製化では固定費としてのコストが発生します。
人件費や育成にかかる費用だけでなく、月額や年額で利用料がかかるシステムやツールもあるでしょう。
固定費の増額は、今後の企業運営に大きく関わります。
そのため、事前にどのくらいの費用が発生するかを確認した上で、内製化を検討することが重要です。
デメリット3 コストに対する意識が低下するおそれがある
人材や設備に対するさまざまなコストが発生することに加え、コストに対する意識が低下してしまうおそれがあるのも、内製化のデメリットといえます。
業務を外部の業者に委託する場合、その業務に対するコスト感が明確です。
どの業務にどのくらいのコストがかかっているのかを把握しやすく、事前に予算を確保したり、コストを意識しながらプロジェクトを進めたりすることが難しくありません。
しかし内製化を進めると、コストは複雑化します。
人件費や設備の初期費用、運用コストなどさまざまな項目で計上されることになるでしょう。
1つの業務にどのくらいのコストがかかっているのかを把握しづらくなるため、コストに対する意識が低下してしまうおそれがあるのです。
内製化する際のポイント
内製化を進める際には、以下のポイントを意識することが重要です。
- 事前に業務フローやコストを整理する
- 自社特有の業務を内製化する
- 内製化すること自体を目的にしない
それぞれ内容を詳しく見ていきましょう。
ポイント1 事前に業務フローやコストを整理する
内製化を進めるにあたって重要なのが、事前に業務フローやコストを整理しておくことです。
いきなり外製化をやめてしまうと、業務がブラックボックス化してしまうリスクがあります。
そのため、まずは業務フローを整理してできるところから徐々に内製化を進めていきましょう。
また、これまで外製化していた業務を内製化する場合、外注費用が削減できる一方、人材の育成や設備にかかるコストが増加します。
内製化した場合のコスト感を整理した上で検討するようにしましょう。
ただし、先ほども解説したように内製化は継続することで大きな効果を得られるものです。
目の前の費用だけでなく、長期的に見た費用対効果も必ず試算しましょう。
ポイント2 自社特有の業務を内製化する
どの業務を内製化したらいいのか分からない場合は、「その業務が自社独自のものかどうか」を判断基準にして内製化を検討しましょう。
内製化のメリットの1つとして、業務に関する知識やノウハウが社内に蓄積されることが挙げられます。
しかし、どんな企業でも発生する業務の場合、大きな価値にはならないでしょう。
一方で自社でしか行っていない業務の場合、蓄積することによってその知識やノウハウ自体が企業の価値になります。
知識やノウハウの漏洩を防ぐためにも、まずは自社特有の業務の内製化から進めていくと良いでしょう。
ポイント3 内製化すること自体を目的にしない
内製化を進めていると、内製化することそのものが目的になってしまうことがよくあります。
しかし、それでは本来の目的を見失ってしまい、うまくいきません。
内製化の目的は、業務効率化とコストの削減です。
内製化を進める際には、「内製化によってどれくらい業務効率が良くなるのか」「内製化によってどのコストが削減でき、どのコストが増加するのか」を常に意識するようにしましょう。
また、内製化にこだわりすぎるのもNGです。
場合によっては内製化によるデメリットのほうが多く、外製化のほうが向いている業務もあります。
常にメリットやデメリット、費用対効果を考えながら内製化を検討しましょう。
業務の全てではなく、一部分だけを内製化する方法もおすすめです。
内製化の事例
最後に、内製化によって良い効果を得られた成功事例を紹介します。
DeNA
スマートフォン用ゲームの開発・配信やSNS運営、電子商取引サービスを提供しているIT企業「DeNA(ディー・エヌ・エー)」は、内製化の成功事例として広く知られる企業です。
DeNAでは、社内で使っていた、システム向けの脆弱性診断のためのツールにおいて、一部の要件を満たすことができないことを課題に感じ、内製化を実施しました。
新たに開発したツールは汎用性が高く、今ではほとんどの業務に必要不可欠なものになっています。
これまで外部委託費用として年間1億円以上ものコストを使っていましたが、内製化によってこのコストの削減に成功しました。
さらに業務効率化や社内にノウハウを蓄積できているという点でも、大きな効果を得ています。
鹿児島銀行
鹿児島に本社を置く「鹿児島銀行」では、スマホ決済アプリ「Payどん」を社内で開発し、2019年にリリースしました。
ダウンロード数は45,000を超え、地元に根付いたアプリに成長しつつあります。
鹿児島銀行では、アプリ開発自体は初の挑戦だったものの、コンサルタント企業と協業しながら開発を遂行しました。
内製化できる体制を整えながら、社内に知識やノウハウを蓄積し、アプリ開発に精通するDX人材の育成に成功しました。
まとめ
特定の業務を外部に委託することをやめ、自社内でその作業を完結させることを意味する「内製化」。
コスト削減や柔軟でスピーディーな対応、業務に関する知識やノウハウの蓄積、セキュリティの向上などのメリットがあります。
ただし、内製化には人材や設備に対するコストが発生するなどデメリットもあります。
内製化を成功させるためには、外製化・内製化のメリット・デメリットを整理し、比較しながらどちらを選択するのかを検討することが大切です。
また、内製化自体が目的になってしまわないよう、注意しましょう。
内製化を進める際には、本記事で紹介した内製化のポイントや成功事例を参考にしてください。
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