顧客VOICE:社員のマインドまでをも変えてしまった、沖縄情報メディア『OKITIVE(オキティブ)』がもたらした効果とは #2
2024年11月に放送開始から65年の記念を迎える沖縄テレビ放送株式会社様。
長い歴史の中で培われた、環境の変化にも柔軟に対応できる力と、社員一人ひとりが新しいことにチャレンジしようという意欲が高いことが印象的です。
その背景には、沖縄テレビ放送の沖縄情報メディア『OKITIVE(オキティブ)』による効果がありました。
本インタビューでは、約4年前から『OKITIVE』立ち上げに携わり、今年6月に沖縄テレビ放送株式会社 取締役 兼 東京支社長に就任された國吉様にお話を伺いました。
写真左から、株式会社アイリッジ 取締役 兼 株式会社Qoil 代表取締役社長 山下 紘史、
沖縄テレビ放送株式会社 取締役 兼 東京支社長 國吉 真二 様
プロジェクトの命運を分ける『最適な人材』とは
──山下さんが本プロジェクトで大切にしたポイントを教えてください。
山下:
國吉さんのお話にもあったように、僕たちが外部からただ話しているだけではまとまらないと思っていました。そこで、社内に誰かを配置する必要があると感じ、その人選が非常に重要であると考えていました。僕らは沖縄に住んでいるわけではないので、ただの受け身のディレクターや営業のような人ではなく、圧倒的なバランス感覚と折れない心、周囲に影響を与えつつも無理なく引っ張っていける人材が必要だと判断しました。
当初、私自身が沖縄へ行こうとも思いましたが、なかなか難しいポジションだったため、最適な人材を常駐させることになりました。沖縄のことをさらに深く学び、テレビ局という特性も理解しながら、新しい軸を作っていくという強い意志を持って進めてもらっています。
このように『最適な人材を選任し、常駐させる』ということが、一番大切にしたポイントです。
正直なところ、WebやSNSの運営は僕たちじゃなくても、経験のある人なら誰でもできます。しかし、沖縄テレビという特性や沖縄の文化を理解し、それをどのように発信するかを自走できるメンバーを加えることが最も重要だったと思っています。
──國吉様はいかがでしょうか。
國吉さん:
私たち放送局の、番組を見てもらった指標は翌日届く視聴率が主でした。コンテンツを作る側は良い視聴率が出るとモチベーションが上がります。同様に、Webでも毎日アクセス数のデータが出てくるため、それが制作チームにとって新しいモチベーションとなっています。テレビと違い、Webでは即座にデータが見えるので、コンテンツの出し方やサムネイルの工夫をどんどん進め、最初の記事とは大きく変わってきたのが面白いところです。
最近の『OKITIVE』では、県外から移住してきた方の体験記事や沖縄への強い愛情を持つ人々の記事が特に人気です。私たちにとっても新しい発見があり、彼らがどのように沖縄を見ているのかを知ることができるのが興味深いです。例えば、地元民が普段行かない高級リゾートについての記事は、新しい視点からの切り口で、多くの人に読まれているようです。
現在、アクセスは月間150万PV弱まで達しており(2024年9月末インタビュー時点)、成果が出るとモチベーションもどんどん上がっていきます。以前は低空飛行だったアクセス数も、再び旅行する人が増え、沖縄ブームが再来したことで急上昇しています。この好調な流れが、チーム全体のモチベーションをさらに引き上げています。
コロナ禍当初は、正直なところオンライン会議もまともにできない状態でした。これまで「会って話す方が早い」と言っていた人たちも、オンライン会議をせざるを得なくなり、DXも一気に進みました。オンライン会議だからこそ、大人数での会議も頻繁に行え、作業のスピードが格段に上がりました。データ解析もその一環です。
山下:
僕たちも、毎月現地に行けるわけではなかったので、オンラインを活用せざるを得なくなったことで、逆に距離感が縮まりました。多くの人と話す機会が増え、課題もすぐに共有できるようになり、結果的にプロジェクトが進むきっかけになったと思います。
──インタビュー第2弾としてサイト運用のお話もしていただく予定ですが、非常にたくさんのコンテンツはどのように制作されているのでしょうか。
國吉さん:
最初は試行錯誤の連続でした。沖縄テレビのドメインだからといって、すぐに大きな反響があるわけではなく、まだまだWebの切り口もないままでした。『ヒト・モノ・コト』を軸にしながらも、インターネットの世界ではグルメが強かったり、占いが人気だったり、そうしたニーズに応えるコンテンツを少しずつ増やしていきました。
また、毎月データを分析しながらレポートを作成し、関わっているメンバーで共通言語化しながら、「これは当たった」「これは当たらなかった」という結果をもとに、繰り返し改善を重ねてきた3年間でした。このプロセスを怠らずに続けたことが要因だと思います。
オウンドメディアに関わったことのある人ならわかると思いますが、途中で数字が伸び悩むとモチベーションが下がりがちです。しかし、メインのメンバーが諦めることなく、着実に続けた結果、今年7月には100万PVを達成しました。これはローカルメディアとしては非常に大きな成果で、軸をぶらさずに続けた結果だと思います。
『OKITIVE』がもたらした、会社と社員の好循環
──継続してモチベーションを保つ秘訣は何でしょうか。
國吉さん:
PRの効果もあり外に出かけると少しずつ『OKITIVE』という名前を聞く機会が増えていきました。認知度が上がっていくことが一つのモチベーションになりましたね。「やっていて意味がある」「もっと良いコンテンツを届けよう」と思えるようになったんです。
特にコロナ禍では、沖縄は観光業が大きな打撃を受けましたが、その厳しい時期を乗り越えて、最近ではさらに頻繁に『OKITIVE』の名前を耳にするようになりました。また、沖縄テレビのメンバーも積極的に企画を出し合い、毎週「ああでもない、こうでもない」と話し合いを続けたことも、みんなが心折れずに頑張れた理由だと思います。
──メンバー皆さんが当事者意識を持って、いい循環が生まれているようですね。
國吉さん:
『OKITIVE』があることが会社全体の自信に繋がっています。また、本プロジェクトを推進したことによって、コンテンツの二次利用などの新しいチャレンジを会社全体が「やろう!」というスタンスに変わったと感じています。新しいことをやっていない社員は上司に仕事をしていないと見なされそうになります。(笑)
山下:
主要メンバー以外の社員さんからも「新しいことをやりましょう!」という声が上がるようになったことが非常に嬉しいポイントです。例えば「TikTokやりましょう」なんて言葉は、『OKITIVE』立ち上げ前には、絶対に上がらなかったと思います。
受け身ではなく、自身で考えて改善したいというマインドになってくれたことに感動しています。
國吉さん:
『OKITIVE』を立ち上げるにあたって、以下の3つのテーマを掲げていました。
- 新たな収益の確保
- ブランド力の向上
- 社員モチベーション向上
その中でも3つ目が特に重要だと考えていて、既存社員の離職防止、新入社員のやる気向上に繋げることに重きをおいていました。結果、社員の心持ちが変わり、会社のスタンスが変わり、非常によい循環が生まれていて、効果を肌で実感しています。
今年5月に代々木公園で開催された『OKINAWAまつり2024』でも配布されたステッカー
國吉さん:
話が少し変わりますが、この『OKITIVE』のステッカーが人気なんです。代々木公園で開催された『OKINAWAまつり2024』でOKITIVEステッカーを配布しまして、多くの沖縄ファンの方が喜んで受け取ってくれました。
沖縄テレビとアイリッジが目指す世界
──今後のデジタル戦略の展望についてお聞かせください。
國吉さん:
デジタルの重要性が増している一方で、テレビ自体存続すると思います。ニュースや情報を発信する役割はこれからも続いていくでしょう。ただ、経営面で見ると、広告収入が以前ほど伸び悩んでいます。広告主の選択肢が増えていることも影響していますね。
しかし、沖縄のメディアとしての価値や『OKITIVE』の役割は重要です。『OKITIVE』は沖縄の情報を発信するツールとしてさまざまな可能性を持っています。それ以外にも、私たちは新規事業に果敢に挑戦しており、社会や地域に貢献できる事業を展開していくことが必要だと考えています。単に利益を追求するだけではなく、地域や世の中のニーズに応える取り組みをすることで、結果として広告収入にも繋がっていくという思いでいます。
現在、『OKITIVE』は月間150万PV弱まで達しており(2024年9月末インタビュー時点)、今年中にはさらに成長する見込みです。人が集まり始めたことで、媒体としての価値も高まってきています。今後は動画を含め、沖縄の情報発信を進めながら、マネタイズも考えていきたいと思っています。
ようやく土台が築かれたと感じており、大きな挑戦はまだですが、少しずつ新しいことに取り組み、変化を促していく段階です。今後も驕らず、地道に前進していく方針です。
新たな企画については、山下さんとも相談しながら進めています。
──山下さんにもお聞きします。今後の展望をお聞かせください。
山下:
取り組み開始から5〜6年が経ち、『OKITIVE』のアクセスも順調に増えています。沖縄テレビさんの社内を見ていて感じるのは、まだ活用できる資産がたくさんあるということです。テレビ局はさまざまなイベントを主催し、地元での集客力がありますが、これまでその力をデジタル上で十分に活かせていなかったのではないかと感じています。今後は『OKITIVE』で、私たちの強みである「オンラインとオフラインの融合」をどう実現していくのかが、これからの課題です。
オフラインで集客してきたこれまでの活動をデジタル上で可視化することで、1to1での情報提供や、より質の高い情報発信が可能になるはずです。デジタル戦略という言葉がよく使われますが、今こそオフラインの重要性が増しており、オンラインとオフラインをミックスしていく方法を共に模索しています。
全国1億2,000万人のデジタル上のデータはたくさんありますが、1億2,000万人をオフラインで見たことはないですよね。でも沖縄だと140万人という人口で、沖縄テレビさんを知らない人って沖縄にいないんですよ。おそらく100%知っています。沖縄テレビさんが主催だから、安心・安全で面白そうだから人が集まる。今まで『集客して終了』だった部分は、先ほど國吉さんがおっしゃっていたように、人が集まり、それを可視化することで様々なチャンスが広がるだろうと、いま一緒に画策しているような感じですね。
そもそも『人を集める』ということが一般企業には難しいのですが、それを生業として、集めて届ける、届けたものを人に渡す、ということができるのが放送局です。我々はパートナーとして、成功確率と速度感を上げるご支援をしていきたいと思っています。
──パートナーとしてのご評価や、お話いただける範囲で具体的な今後のお話しがあればお聞かせください。
國吉さん:
我々だけでは難しい部分、特にデジタル周りのことで非常に頼もしいパートナーです。
先ほどもありましたが、年に10本〜20本イベントを主催していて、6〜7万人が集まるような展示イベントを開催したりもします。
イベントが終了したら、「皆さん喜んで帰りました!また来年も頑張りましょう!」と翌年またゼロから立ち上げるわけですよ。まさしく宝の持ち腐れですよね。こういうものをどんどん拾っていきたいですし、過去の色々なご経験をもとにしたアドバイスをいただきながら、我々の放送局にはまるものを一緒に開発していけたらなと思っています。
まだまだ夢物語ですが、沖縄のこうした課題は全国のローカル放送局でも共通するものだと思いますので、そこを様々な形で連携していけたら良いなと山下さんとよく会話しています。
山下:
沖縄は人口や面積、マーケットがちょうど日本の1/100ぐらいなんです。その沖縄の課題感をぎゅっと解決できたら、メディアという軸では他のローカル局も同じような課題を持っているはずなので、横展開ができるのではないかと思っています。そして、沖縄だけではなく、沖縄テレビとして新しいビジネスをアイリッジと一緒に日本中に広げていけたらという構想をしています。
山下:
最後になりますが、アイリッジならではでいうとやっぱり『アプリ』ですね。
オウンドメディア制作より以前に「アプリはどうか」という話もありましたが、いきなりアプリを開発しても、人がいないアプリになったら誰にも使われないで終わってしまいます。なので、当時はアプリは時期尚早であると否定しました。
『OKITIVE』に人が集まるようになってきた今、いよいよアプリという手段を軸にユーザーの可視化と沖縄テレビ・沖縄のファンを囲い込むタイミングに来たかなと思っています。また沖縄テレビの皆さんを巻き込みながら、進めていければと思います。
もうすでに「どういうアプリにしたいか」などの社内アンケートを取っていたりしますので、2025年 Coming soon!という感じですね。
「沖縄テレビが人を集められる」「アイリッジがアプリを作れる」「Qoil(コイル)がオフライン設計をできる」という見事なバランスで、この形だから実現できるものを、25年楽しみにしておいてもらえたらと思います!
──実現を楽しみにしています!本日はありがとうございました。
(取材・文:松岡知美/榎本蒼、写真:浅野智洋)