KGIとは?KPI・KSFとの違い等をわかりやすく解説
どのようなビジネスでも成功するためには、目標を設定することが大切です。そこで必要となるのが、「重要目標達成指標」を意味するKGIです。KGIは営業やマーケティングなどのビジネス上でよく聞く用語ですが、その意味や使い方を正しく理解していない人も少なくないでしょう。
そこで今回は、KGIの意味や混同される用語との違い、設定方法、達成するためのポイントなどをわかりやすく解説します。KGIについて正しく理解し、マーケティングや経営に活かしたい方はぜひ参考にしてください。
KGIとは
KGIとは、「Key Goal Indicator」の略称で、日本語では「重要目標達成指標」、つまり企業が目指すゴールのことを意味します。
一般的には、企業のあらゆる事業・活動がこのKGIの達成を目標にしていることが多いです。
KGIは、抽象的な目標ではなく具体的な目標を定めることが良しとされています。
例えばカスタマーサクセス部門で「顧客満足度の向上」という目標があるとしましょう。
これだけでは具体的ではないため、KGIとしては「3カ月以内の商品リピート率50%を達成」「お客様アンケートでの満足度80%獲得」といった目標を定める必要があります。
このように、KGIを定めるときには、誰でも理解できる定量的なものにすることが重要です。
KGIとKPIの違い
KGIとよく似た言葉に、「KPI(Key Performance Indicator)」というものがあり、混同してしまっている方も多いでしょう。
KPIは「重要業績評価指標」を意味していて、企業の最終目標に対して、現在どれくらい達成しているかを図る指標のことです。
KGIを達成するためのチェックポイントや段階的な小目標をイメージするとわかりやすいでしょう。
つまり、KPIはKGIを達成するために必要なものであり、KPIを1つずつ達成していくと結果としてKGIを達成するように設計していく必要があります。
KGIとOKRの違い
「OKR(Objective and Key Result)」とは、「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」のことです。
KGI・KPIは「最終目標に対する進捗度」を図る指標なのに対し、OKRは「ゴールを達成するためのプロセスをチーム内や社内で共有したり可視化したりする目標管理方法」を指します。
また、KGI・KPIとOKRは規模や柔軟性の面でも違いがあります。
KGIやKPIは会社全体で定める中長期的な目標で、一度定めたら大きく変更することはほとんどありません。
しかし、市場状況や経営環境が変化してしまうと、KGIやKPIに向かって一直線に向かうのが難しいケースも出てきてしまいます。
一方、OKRは四半期や半期ごとに設定する柔軟性の高さが特徴です。
企業が目指すべき方向を定期的に見直して会社全体で共有するのに最適な方法といえるでしょう。
さらに「個人OKR」「チームOKR」「会社OKR」と設定し、連動させながら達成を目指すことで、個人と会社双方のパフォーマンスの向上につながります。
KGIとKSFの違い
「KSF(Key Success Factor)」は、「重要成功要因」を意味する言葉で、最終目標の達成に必要な行動のことを指します。KSFを特定・実現しながらKPIを達成し、最終的にKGIが達成されるイメージです。
KSFは、外的要因(市場や世界情勢の変化、競合の参入など)と内的要因(自社の強みや経営目標など)を分析することで明確化されます。
市場や自社の状況が変わればその度にKSFも変化するため、定期的にアップデートしながら業務に落とし込んでいくことが重要です。
KGIを設定するメリット
企業がビジネス戦略においてKGIを設定するメリットは、以下の4点です。
- 会社の向かう方向をステークホルダーが理解できる
- 経営目標や各事業の達成度を把握できる
- 事業の改善を効率よく行える
- 従業員のモチベーションを維持しやすい
それぞれ詳しく解説していきましょう。
メリット1 会社の向かう方向をステークホルダーが理解できる
KGIを設定すると、会社が向かっている方向をステークホルダーが理解しやすくなります。
ステークホルダーとは、企業に利益や損失をもたらすあらゆる関係者のことで、具体的には株主や経営者、従業員、顧客、取引先、金融機関、行政機関などが挙げられます。
特に、株主や従業員、取引先など、会社に利益をもたらす存在にとって、会社のKGIは大切です。
「この会社がどこに向かって経営しているのか」が見えなければ、会社を積極的にサポートすることはないでしょう。
ステークホルダーに経営の方向性を理解してもらい、利益をもたらしてもらうためにはKGIの設定が欠かせません。
メリット2 経営目標や各事業の達成度を把握できる
KGIは具体的な数値を用いた経営目標のため、設定することで達成度が把握しやすくなります。
例えば、「3カ月で売上100万円」という現状があったとしましょう。
この事実だけ見ると良いか悪いかを判断できませんが、KGIが「3カ月で売上50万円達成」であれば200%の達成率、同じくKGIが「1カ月で売上100万円達成」であれば未達成ということになります。
KGIが定められていないと、「現在の経営状況は良いのか悪いのか」を判断できず、結果的に目標の未達成につながってしまう可能性があります。
KGIを定めることでKPIも定めやすくなり、より具体的に現状を把握できるようになるのです。
メリット3 事業の改善を効率よく行える
KGIを定めて経営目標や各事業の達成度を把握できれば、達成に向かってどのような改善を行えばいいかも自然と把握できるようになります。
事前に定めたKGIと現状を常に比較し、KSF(何が足りないのか・どうすれば達成できるのか)を明確化することで、効率的な改善が可能です。
メリット4 従業員のモチベーションを維持しやすい
KGIの設定には、従業員のモチベーションを維持しやすくなるというメリットもあります。
従業員が高いモチベーションで働き続けるためには、具体的な目標が必要です。
ただただ「売上を上げろ」と言われるより、「3カ月以内に100万円の売上が目標」と言われた方が、頑張ろうという気持ちになるでしょう。
また、KGIを定めれば会社全体が同じ方向に向かうことになります。
社内共通の目標を持つことで、チームや同僚同士で高め合いながらモチベーションを維持しやすくなるのです。
KGIの具体例
KGIはビジネスの内容によって変わってきますが、具体的にどのように設定すればいいのでしょうか?ここでケース別にKGIの具体例をご紹介します。
企業の売上目標におけるKGI
売上を上げていくことはビジネスを展開していく上で特に重要となってくる要素であるため、売上目標に関するKGIが設定されます。企業の売上目標におけるKGIの具体例は以下のとおりです。
KGI | 具体例 |
---|---|
総売上 | 四半期で○万円の売上を達成する |
売上高 | 月間売上を前年同月比で○%アップさせる |
最終的な売上目標が決まることで、達成するためにどのような目標(KPI)が必要になるのかが考えやすくなります。例えば「月間売上を前年同月比でアップさせる」というKGIであれば、見込み客に対するアポイント数や既存顧客への営業訪問数、平均客単価をアップさせるKPIを設定し、改善に努めていくことが求められます。
新規顧客獲得を目指したマーケティング分野でのKGI
既存顧客に依存すると顧客離れなどが起きた際に収益低下のリスクがあるため、新規顧客の獲得を目指さなければなりません。そのため、マーケティング分野では新規顧客獲得に向けたKGIが設定されます。新規顧客獲得を目指したマーケティング分野のKGIの具体例は以下のとおりです。
KGI | 具体例 |
---|---|
新規顧客数 | 新規顧客数を前年比○%アップする |
顧客満足度 | 顧客満足度○%を達成する |
「新規顧客数をアップさせる」というKGIを設定した場合、月間のリード獲得数やメールマガジンの登録者数、資料請求数などがKPIに設定されます。また、顧客満足度も間接的に新規顧客数を増やすことにつながるKGIとなるでしょう。既存顧客の満足度が高まると口コミが増えやすく、口コミを見たことをきっかけに顧客となってくれる可能性があります。
人材採用におけるKGI
事業の成長や存続のためには、目的に合わせて必要な人材を補給することが求められます。そのため、人材採用においてもKGIの設定が必要です。人材採用におけるKGIの具体例は以下のとおりです。
KGI | 具体例 |
---|---|
採用数 | 営業○人を採用する 新卒を○人採用する |
人材の質 | ○○の経験がある人を採用する ○○を難なくこなせるスキルを持つ人を採用する |
採用コスト | 採用コストを○%削減する |
早期離職 | 早期離職率を○%下げる |
人材採用では、採用数がKGIとして設定されます。採用数をKGIとして設定する場合、どの部署にどのような人材が何人必要なのかを具体的に設定することが大切です。そのため、単純に人数だけではなく、保有するスキルや経験といった人材の質もしっかり設定しておきましょう。
また、採用にはコストがかかるため、コストがかかりすぎているのであれば、削減に向けたKGIを設定することもあるでしょう。他にも採用後に早期離職してしまうことが多ければ、KGIを設定して離職率の低下に取り組んでいく必要があります。
製造・生産管理におけるKGI
製造業では、製造や生産管理におけるKGIが設定されます。物的資源を投入して製品をつくり、それを販売して収益を得る業種であるため、生産性・品質・コスト管理などを反映したKGIを設定することになります。製造・生産管理におけるKGIの具体例は以下のとおりです。
KGI | 具体例 |
---|---|
生産性 | 単位時間あたりの生産量を○%に増やす |
品質管理 | 不良品の発生率を○%に下げる |
生産コスト | 原材料を○%に削減する ○ヶ月以内に人件費を○%削減する |
納期遵守率 | ○ヶ月以内に○○○の納期遵守率○%を達成する |
製造業では、生産効率の向上や品質の維持・向上、コストの削減、納期遵守率の向上などに向けたKGIを設定するケースが多いです。これらの目標は経営においても重要な役割があるので、目標達成には現場レベルで改善に取り組んだり、設備投資や人材育成に力を入れたりする必要があります。
良くないKGIの例
KGIは企業が目指す最終的な目標であるため、具体的に設定しなければなりません。ここからは、良くないKGIの具体例を見ていきましょう。
抽象的すぎて行動に落とし込めないKGI
抽象的すぎるKGIは行動に落とし込むことが難しくなるため、良くないKGIになります。抽象的すぎるKGIの例は以下のとおりです。
- 世界で一番の企業になる
- 顧客満足度を向上させる
- 売上を伸ばす
など
例えば、「世界で一番の企業になる」という目標は、何を基準に世界一になるのかが明確ではないため、達成するためにどう行動すればいいのか決まりません。これが「世界シェア○%を達成する」というKGIであれば、海外に販路を広げる、年間売上数○%を達成するといった、KGI達成に向けて取るべき行動や目標が見えてくるでしょう。
測定可能性が低く、進捗を確認できないKGI
測定可能性が低く、進捗を確認できないKGIの設定もNGです。測定可能性に欠けるKGIの例は以下のとおりです。
- 顧客の信頼を得る
- 市場シェアを拡大する
- 業界でトップクラスのブランドとなる
など
これらのKGIは、定量目標が設定されておらず、漠然とした目標になっています。数値的な目標がないと、どうなったら達成となるのかわからないため、KGIとしては不適切です。
目標を達成できているかの評価は人によって変わる可能性があるので、正確な達成度合いを測るためにも、「売上高○万円を達成」や「作業効率を○%アップする」など測定可能なKGIを設定しましょう。
短期的な視点に偏りすぎたKGI
短期的な視点に偏ったKGIを設定しないようにも気を付けてください。短期的な視点に偏りすぎたKGIの具体例は以下のとおりです。
- 今月中に新規顧客を100人獲得する
- 次の四半期で売上20%を増加させる
など
そもそもKGIは、企業やプロジェクトが達成したい最終目標の成果を評価するための指標であるため、長期的な視点で設定します。短期的な成果に焦点を当ててしまうと、企業の持続的な成長を妨げてしまう恐れがあります。
KGIは長期的に取り組む大きな目標と考え、それを達成するための短期的な小さな目標としてKPIを設定しましょう。
チームのリソースを無視した非現実的なKGI
チームのリソースを考慮せず、非現実的なKGIもNGです。非現実的なKGIの例は以下のとおりです。
- 半年で売上100%増加させる
- 新規事業を5つ立ち上げる
- 大規模な海外展開を行う
など
ヒトやカネ、時間などの自社で保有するリソースに不釣り合いの目標を設定すると、達成が難しくなります。目標が高すぎるゆえに、チームのモチベーションが下がってしまうことも懸念されるでしょう。
大きな目標を掲げることは大切ですが、現状のリソースやチームの能力で達成可能なのかを考慮して、チームが納得できるKGIを設定することが大切です。
KGIの設定方法
KGIの設定は、以下のステップに沿って進めていきましょう。
- 現状課題の洗い出し
- ソリューションの決定
- 目標の数値化(KGI化)
- 曖昧さの排除(SMARTの法則)
それぞれのステップにおけるポイントや注意点を紹介します。
ステップ1 現状課題の洗い出し
まずは、現状を整理して会社が抱えている課題を洗い出すことから始めます。
KGIの設定には、現状の課題を解決・改善しながら会社の向かうべき方向を考えることが重要です。
逆に、現状の課題がわからないと適切なKGIを設定することができません。
課題を洗い出す際は、経営陣だけでなく各部署のリーダーや現場メンバーも巻き込みながら整理しましょう。
経営陣だけで決めてしまうとかえって現場の負担となり、モチベーションの低下や離職につながってしまう可能性があるためです。
ステップ2 ソリューションの決定
現状の課題が整理できたら、その課題を解決するためにはどのようなソリューションが必要なのかを決定しましょう。
システムの導入や人材の採用、従業員の研修なども1つの案といえます。
自社内で答えが出ない場合は、外部のコンサルティング会社に相談したり、競合会社のソリューションを参考にしたりするのもおすすめです。
ステップ3 目標の数値化(KGI化)
決定したソリューションに対し、具体的な数値を用いてKGI化します。
KGIは抽象的ではなく具体的に、誰が見てもわかりやすいものにする必要があります。
達成しているかどうかが簡単にわかるような目標をKGIに設定しましょう。
先ほど紹介したKGIの具体例もぜひ参考にしてください。
ステップ4 曖昧さの排除(SMARTの法則)
KGIを定める上でおすすめなのが、「SMARTの法則」を意識することです。
「SMARTの法則」は以下の5つの要素からなるもので、KGIの曖昧さを排除するために効果的といわれています。
- Specific(明確性):誰が見てもわかりやすいかどうか
- Measurable(計量性):具体的な数値を用いているかどうか
- Achievable(現実性):実現可能であるかどうか
- Result-oriented or Relevant(結果指向または関連性):KPIとつながりがあるかどうか
- Time-bound(適時性):期限を定められているかどうか
KGIを定めたら、これらの要素を満たしているかどうかを再度チェックして、KGIの曖昧さを排除しましょう。
KGIを達成するためのポイント
最後に、KGIを達成するためのポイントを紹介します。
ポイント1 数値化・見える化を意識する
先ほども解説したように、KGIは定量的なものを定めましょう。
ただし、場合によっては具体的な数値を用いた目標設定が難しい場合も考えられます。
数値化できない業務の場合は、できる限り業務を見える化・デジタル化し、1つ1つを達成できたかどうかを確認できるようにすることが大切です。
業務を見える化・デジタル化することで、定量的に判断できない業務でも、具体的なKGIを定めることが可能になります。
ポイント2 達成困難なKGIを設定しない
どう考えても達成困難な目標をKGIとすることは避けましょう。
従業員から会社への不満につながり、かえってモチベーションを低下させてしまう可能性があります。
とはいえ、簡単に達成できる目標をKGIにしても意味がありません。
従業員1人1人が努力すれば達成できるラインを見極め、KGIとして設定することが重要です。
ポイント3 KGIとKPIを連動させる
KPIはKGIを達成するステップであるため、1つ1つ達成していくことで最終的にKGIの達成につながります。
KGIを達成するためには、KGIと連動したいわゆる小目標のKPIを定め、必要に応じて調整しながら日々の業務に落とし込むことが大切です。
ポイント4 チーム全員でKGIを共有し、目標の認識を統一する
KGIを達成するためには、チーム内でしっかり共有することも大切です。チーム全員がKGIを認識していないと、どのような目標を達成するのか、どのような行動を取ればいいのかわかりません。KGIを共有して目標の認識が統一されることで、チームが一丸となって目標達成に向けた行動が取りやすくなり、KGI達成にも近付きます。
また、各チームや部門ごとにKGIやKPIを設定すると、企業全体の戦略との合理性が取れなくなる可能性があります。そのため、KGIやKPIは企業全体の目標にも考慮し、各部門・チーム間で共有して連携の強化を図ることも大事です。
KGIは都度見直すべき?
KGIは定期的に見直すことをおすすめします。都度見直しが必要な理由は、環境や市場状況の変化によって、設定したKGIが現実にそぐわなくなることがあるためです。
また、チームのリソースやスキルが変化して、KGIの達成可能性が変わることがあります。他にも初期のKGIが不適切であったり、非現実的であったりする可能性にも考慮して見直すことが求められます。
具体的にKGIを見直すべきタイミングの例は以下のとおりです。
- 新しい競合が現れたなど、市場や競合の動向に大きな変化があった場合
- 進捗が著しく遅れている、もしくは予定よりも早く達成した場合
- 予算削減やメンバーの増減など、チーム・組織のリソースや構造に変更があった場合
- 定期的なレビューの中で目標が非現実的だと判明した場合
まとめ
KGIは企業が目指すべきビジネス上の目標であり、事業を成長させるために欠かせないものとなります。長期的な視点で現実的に達成可能な目標を設定し、その実現のために細かい目標や戦略、施策を決め、取り組んでいくようにしましょう。
KGIは具体的に目標を設定することが大切なので、今回紹介した例やポイントを参考に、自社に適したKGIを設定して、経営やマーケティングなどに活かしてください。
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