デザインガイドラインとは?テンプレートの構成要素や有名企業の事例も紹介

デザインガイドラインは、企業やサービスのデザインに一貫性を持たせるための重要なルールです。ロゴや色、フォントだけでなく、使い方の指針をまとめておくことで、複数人が制作に携わってもブランドイメージがぶれる心配がありません。
本記事では、デザインガイドラインの基本的な役割やテンプレート構成要素を解説し、さらに有名企業の事例を紹介します。最新情報をもとに、明日からの実務にすぐ活かせるチェックポイントも盛り込みましたので、ぜひ参考にしてください。
デザインガイドラインとは?

デザインガイドラインとは、大規模のWebサイトやアプリ制作で用いられる、Webサイトやアプリのデザインに関するルールがまとめられた指針です。デザインは一般的に見た目を表す言葉として活用されますが、実際には見た目だけでなく設計や機能性も含めてデザインと呼びます。
そのため、デザインガイドラインに関してもサイト・アプリのカラーやフォントなどに加え、全体のコンセプトやテイスト、設計、機能性、UI・アニメーションなどもすべてデザインガイドラインに含まれています。
プロジェクト全体で運用することになるため、デザイナー以外にも開発時にエンジニアが参考にするケースも少なくありません。
デザインガイドラインが必要である理由
大規模なWebサイト制作やアプリ開発になると、多くの人・チームが携わることになります。例えばエンジニアやWebデザイナー、UIデザイナー、アプリデザイナーなどです。さらに、作業の進捗を管理するディレクターなども存在します。
分業で行うことで各担当者が同時進行で作業を進められるため、スピーディに進行します。しかし、各担当者がそれぞれのルールを元に制作してしまうと、統一性がなかったり、修正の多さから開発の遅延につながったりするケースもあるでしょう。そのため、デザインガイドラインを作成し、全体でルールを共有する必要があるのです。
逆に小規模だと携わる人数が少なく、1人が作業を担う割合も増えるため、わざわざガイドラインを作成する必要もありません。
スタイルガイドとの違い
デザインガイドラインと似た言葉に、「スタイルガイド」があります。スタイルガイドとは、Webサイトやアプリを開発する際に、文字や色、サイズなどのデザインに関するスタイルを定義したものです。一見デザインガイドラインと似たように感じられるかもしれませんが、役割自体は大きく異なります。
デザインガイドラインは基本的にWebサイトやアプリのデザインを制作する前に、ディレクターやチーム全体、さらにクライアントも含めてデザインのルールや方向性を決めていくものです。一方、スタイルガイドはデザインが決まってから、エンジニア向けに細かいデザイン要件をまとめた資料になります。
デザインシステムとの違い
デザインシステムとは、より良いプロダクトにするためのルールやツールを連携させ、まとめられたものになります。ソフトウェアやグラフィックなどのデザインに関するルールと、UIコンポーネントなどのツールによって構成されているのが大きな特徴です。
デザインガイドラインと同様にデザインのルールが定義されていますが、コンポーネントライブラリが含まれています。コンポーネントライブラリとは、Webサイトやアプリなどで統一感を持たせるために活用されるデザインやUI要素をまとめたものです。ルールに基づく形でコンポーネントライブラリなどを作るのが、デザインシステムにおいて重要となります。
デザインガイドラインとよく比較される デザインシステム について、さらに理解を深めたい方はこちらの記事も参考になります。作り方や主要な構成要素、ガイドラインとの違いについて詳しく解説しています。
デザインガイドラインを作るメリット

大規模なプロダクトを進める上で、デザインガイドラインを作っておくと以下のメリットが得られます。
- コミュニケーションコストを削減できる
 - 品質とトーンの一貫性が保たれる
 - 制作・運用の効率が向上する
 - 複数人での制作でもスムーズに連携できる
 
それぞれのメリットについて詳しく解説していきましょう。
コミュニケーションコストを削減できる
1つ目のメリットとして、コミュニケーションコストの削減が挙げられます。コミュニケーションコストとは、チームで情報の伝達や意思疎通を図るのにかかる時間や手間を意味します。例えば業務の指示が的確に伝わらなかった結果、何をすればよいのかわからなかったり、担当者が明確ではないことで誰に相談すればよいか迷ったりするなど、必要以上に労力を費やしてしまうことも多いです。
デザインガイドラインを制作することで、わざわざ担当者に質問をしなくても、ガイドラインを見て自己解決を図れるようになります。また、万が一プロダクトの制作途中で担当者が変わることがあったとしても、デザインガイドラインを見れば引き継ぎもスムーズに行われるでしょう。
品質とトーンの一貫性が保たれる
大規模なWebサイト制作やアプリ開発で起こりやすい問題点に、担当者の分業によって品質やトーンにばらつきが出やすい点が挙げられます。例えば、ユーザーが利用しやすいようにUIデザインにさまざまな工夫が施されていたとしても、サイトやアプリ全体のカラーに統一感がなく、見にくい状態になってしまえば、せっかくのUIデザインも活かされません。
デザインガイドラインを設けることで、デザインに関するルールや指針を全員で共有でき、デザインを考える中で生じてくるズレを未然に防ぐことができます。品質と仕上がりのトーンなどに一貫性を持たせるためには、欠かせないガイドラインといえるでしょう。
制作・運用の効率が向上する
デザインガイドラインを設けることで、制作・運用の効率が向上することも大きなメリットです。ガイドラインによって一定のルール・指針があれば、それが作業時の判断軸となってきます。例えばボタン1つのデザインについて悩むこともありますが、ガイドラインに基づいて制作すれば効率も上がるでしょう。
Webサイトの公開後やアプリのリリース後も、デザインの改修やアップデートなどさまざまな作業をこなさなくてはなりません。長期的な運用が必要なプロダクトであれば、それだけデザインガイドラインによる効率性の向上はメリットになるといえます。
複数人での制作でもスムーズに連携できる
大規模なWebサイト制作やアプリ開発は、基本的に1人で行うものではなく、複数人で制作するものです。複数人が同時に作業を進めようとすると、連携がうまくいかなくなるケースもありますが、デザインガイドラインがあればデザインのルールや方向性などを共通認識として持てるようになります。
共通認識を持つことで、方向性などもブレずに一貫性のあるWebサイト・アプリに仕上がるでしょう。共通認識を持っていることでスムーズに連携できるのも1つの魅力です。
構成要素から見る基本のデザインガイドラインテンプレートの内容

デザインガイドラインのテンプレートは基本的な構成要素からルールについて決められていることが多いです。デザインガイドラインを作成する前に、どのような要素から構成されているのか確認しておきましょう。
ブランドイメージとトーン&マナーの明確化
まず重要となってくるのがブランドイメージです。自社やクライアントのイメージに伴い、Webサイトやアプリを開発する場合にはブランドイメージを共通認識として共有する必要があります。
また、トーン&マナー(トンマナ)を明確化することも重要です。企業やブランドのイメージに統一性を持たせるには、デザインの方向性や文章のテイストなどをあらかじめ設定しておく必要があります。ブランドのイメージを意識しながらトンマナを決めておきましょう。
figmaなどのデザインツールを活用することで、ブランドイメージやトンマナのビジュアル的な表現をチーム全体で共有しやすくなります。
配色・余白・フォントなどのビジュアルルール
デザインガイドラインのテンプレートには、配色や余白、フォントといったビジュアルに関するルールも設定する必要があります。配色はサイトやアプリ全体の土台となるベースカラーと印象付けるためのメインカラー、そして全体を引き締めてユーザーの目を引かせるアクセントカラーの3つから構成されます。
さらに、Webサイトやアプリに洗練されたイメージを持たせる余白のルールや、フォントの書体やサイズ、色味も重要です。これらのルールはサイトやアプリだけに留まらず、企業やブランドの印象にも影響を与える可能性が高いため、ブランドイメージに合わせて制作する必要があります。
ナビゲーションやUIパーツの使用ルール
サイトやアプリの骨組みや、ユーザーがページを移動するための設計に欠かせないナビゲーションも、デザインガイドラインで定義されます。ナビゲーション設計はユーザーが快適にサイト・アプリを活用するために必要な要素です。
また、ナビゲーション設計と同様に、ユーザーの使いやすさをより向上させるUIパーツの使用ルールなどもガイドラインで決めておきます。UIパーツの使用ルールを適用させることで、同じパーツでも使い方が異なりユーザーが混乱するような事態も回避できます。
画像・アイコン・イラストの取り扱いルール
Webサイト・アプリ上で画像やアイコン、イラストなどを用いる場合には、正しく取り扱うためのルールを設定する必要があります。素材として画像やアイコン、イラストを用いる場合、自社が保有するデザインであれば統一感を持たせることもできますが、自社以外の画像・イラストを取り入れてしまうと統一性が損なわれやすいです。そのため、自社以外の画像やイラストを用いる際に、選ぶための基準をデザインガイドラインで明確にしておきます。
アイコンに関しても、既定のサイズや枠の形などをあらかじめ決めておくことで、統一感のある見た目を維持できます。
レイアウトやコンポーネントの構造設計
Webサイトやアプリのレイアウトには複数の種類があり、あるケースに対してどのようなレイアウトを用いるのが適切なのかを、デザインガイドラインで設定することが可能です。また、他のサイトやアプリにも活用できそうなコードやコンポーネントはすぐ使えるように、デザインガイドラインで整備している場合もあります。
デザインガイドラインの各要素を定義する前段階として、プロジェクト全体の方向性を固める 要件定義 が欠かせません。こちらの記事では、UI/UX要件の整理や機能の優先順位付けなど、要件定義書について詳しく解説しています。
おすすめのデザインガイドラインテンプレート

デザインガイドラインを一から作成するのは大変です。しかし、テンプレートを活用すれば一から作成するよりも手間をかけずにデザインガイドラインが完成します。テンプレートにもいくつか種類があるので、その中でも特におすすめのテンプレートを紹介します。
Style Guide Template in CSS
Style Guide Template in CSSは、大規模なWebプロジェクトで活用できるデザインガイドラインのテンプレートです。最低限の要素だけで構成されていることからシンプルでわかりやすく、手軽にカスタマイズできるのが魅力となっています。
目的・プロジェクトの内容に合わせてアレンジを加えることもでき、より自社に適したデザインガイドラインを制作できるようになります。
参考:Style Guide Template in CSS
Stylify Me
Stylify Meは、WebサイトのURLを入力するだけでデザインガイドラインを自動生成してくれる便利なテンプレートです。企業やブランドのサイトURLを入力すると、そのサイトで使われている色を抽出したり、使われているフォントも一覧で表示されたりします。
そのままデザインガイドラインに使用するとなると、配色・タイポグラフィ・画像サイズのみとなってしまうため、デザインガイドラインを作成するためのツールとして活用してみましょう。
参考:Stylify Me
Spirally
Spirallyはデザインガイドラインを作成するのに活用できる、企業向けプラットフォームです。質問に答えるだけでテンプレートを作成できたり、ロゴを登録することでブランドカラーが自動生成されたりするなど、さまざまな機能が備わっています。また、作成したデザインガイドラインの公開範囲を設定することも可能です。
参考:Spirally
有名企業のデザインガイドライン事例9選

有名企業ではデザインガイドラインを導入しているケースも珍しくありません。どのようなデザインガイドラインとなっているのか、98つの事例を紹介していきます。
Google:Material Design
Google社のデザインガイドラインである「Material Design」は、多岐にわたるGoogle製品におけるデザインの基礎になっているガイドラインです。アクセシブルなデザインの基礎から色・アイコン・モーションなどあらゆるスタイルのデザインと要素、さらに多種多様なコンポーネントまで揃っています。
また、ブログ内ではGoogleのマテリアルデザインに関する最新情報が掲載されているため、デザインの進化を見ることも可能です。
Apple:Human Interface Guidelines
Apple社のHuman Interface Guidelinesは、日本だけでなく世界各国で広く普及するiPhoneやMac、iOSなどのブランド製品に関するデザインガイドラインです。Apple社はデバイスの企画・開発を手がけるメーカーということもあり、各デバイスで最適な見せ方ができるルールを設けています。
基礎的な部分からApple社ならではのテクノロジーや機能、サービスなども含めてガイドラインで設定されています。
Microsoft:Fluent Design System
Microsoft社が作成したデザインガイドライン「Fluent2 Design System」も、Apple社やGoogle社と同様に、デザインの原理・原則に基づいて制作されているガイドラインです。元々Microsoftでは「Metro」と呼ばれるデザインが採用されていましたが、それほど注目されていませんでした。しかし、Fluentをデザインシステムとして構築することで、マテリアルデザインと同様の立ち位置にすることもできます。
Fluent2 Design Systemは、Webとモバイルを横断する際にデザインを最適化させる「Shared Style」が中心となります。
Adobe:Spectrum
PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなど、クリエイティブなソフトウェアを提供するAdobeのデザインガイドラインとして「Spectrum」があります。Spectrumは主に3つのセクションで分かれています。
- Principles:基本的な考え方とデザインシステム全体でどのように実践しているか
 - Resources:UIキットやフォント、アイコンなどをすぐ使えるようにしている
 - Implementations:UIを実装する際に使える、オープンソースのCSSを用意
 
デザインや各コンポーネントのルールを参考にできるのはもちろんですが、パーツを制作する際にも役立つのでおすすめです。
参考:Spectrum
IBM:Carbon Design System
IBMのCarbon Design Systemは、IBMが手がける製品・デジタルエクスペリエンスを設計する際に活躍するオープンソースのデザインガイドラインです。ルールに加え、実用的なコードやデザインツール、さらにコミュニティなどから構成されています。
Carbon Design Systemは、1つのコンポーネントを解説する記事の中で、概要から書式設定、コンテンツ、実装コードなどがすべてまとめられているため非常にわかりやすく、理解しやすいメリットがあります。
Salesforce:Lightning Design System
SalesforceのLightning Design Systemは、Lightning Experienceのアプリケーションを構築するためのCSSフレームワークです。中でも4つの基本設計原則となる明確性・効率性・一貫性・美しさをコンセプトに、アプリケーションを構築するための設計言語とツールが提供されています。そのため、Lightning Design Systemを活用すればCSSを書かなくてもアプリケーションを構築できるというメリットがあります。
Audi:User Interface / UI Introduction
ドイツの自動車メーカーとして知られるAudiには、UIに関するデザインガイドラインがあります。ブランドのコンセプトや基本的な構成要素に関しても明確になっていますが、UIについてはWebサイト・アプリから車に至るまで、ありとあらゆるソリューションとシステム全体のバランスが取れたユーザー体験(UX)を実現することを目指しています。
また、デザインガイドラインには、シンプルで洗練されたフォントや画像などが用いられているのも特徴です。
参考:Introduction
Uber:Design Guidelines
世界各国でライドシェアやフードデリバリーなどのサービスを手がけるUberでは、開発者プラットフォームとの統合に、デザインガイドラインとアセットを合わせて使用することを伝えています。
さまざまなサービスを提供しているUberですが、その基本となっているのは「移動」です。そのため、社内ブランドや製品・プログラムなど、すべてのサービスにおいてUberのブランドを統一させるためにも、デザインを共有する必要があります。そこで、承認済みのロゴやアイコン、写真などをデザインガイドラインから入手できるようになっています。
メルカリ:mercari design
メルカリは、日本企業として初めてグローバル基準のデザインガイドラインを本格導入し、「Brand Core」と「Design Principles」の2層構造を採用しました。Brand Coreでは、安心感や簡単さ、ワクワク感、ちょっと良いことをしている気分など、顧客に届けたい体験価値が明文化されています。
加えて、それらを実現するための5つのDesign Principles(Trusted/Open/Simple/Empowering/Connecting)が定められました。これにより、複数チームが関わる開発でも「メルカリらしさ」の統一が図りやすくなっています。
現在ではUI設計やブランディング施策など、多様な場面で“判断の基準”として参照されており、社内への定着も進んでいます。
参考:メルカリのデザイン指針を作る取り組み [前半: 指針の紹介編] |Mercari Design Blog
▼「ユーザーが離脱するUIの特徴を把握したい方」 におすすめの調査レポートはこちら
【最新版】半数が離脱してしまうほどダメなUIとは?アプリUX 市場調査レポート
まとめ:テンプレートを活用して、自社に合ったデザインガイドラインを整備しよう

デザインガイドラインは、ブランドの一貫性を維持し、制作の効率化や品質向上を実現するために欠かせない仕組みです。テンプレートの構成や有名企業の事例を参考にしながら、自社に合ったガイドラインを整備していくことが重要です。
小規模・中規模のプロダクトでもアプリのデザインに統一性を持たせたり、企画の目的をクライアントも含めて全員に共有したりすることは、アプリの質を上げるために重要な要素です。アイリッジの「アプリ企画/RFP作成支援」は、アプリ開発の伴走型コンサルティングサービスであり、要件の整理から企画策定、企画書・RFP(提案依頼書)の作成まで、企画フェーズを支援します。
また、企画段階だけに留まらず、アプリ運用後の活用支援やプロモーションなどもまとめてサポートすることが可能です。アプリの企画から伴走型のコンサルティングを希望される方は、ぜひ「アプリ企画/RFP作成支援」をご利用ください。
  


