経営計画を「より身近なもの」へ。国分グループが挑んだ、心を動かす「8分間のビジョンムービー」制作プロジェクトの裏側
創業300年以上の歴史を持つ食品卸売業の国分グループは、2026年1月より始動する「第12次長期経営計画」の社内浸透を促すためのビジョンムービー制作を検討していました。
アイリッジおよびQoilは、APPBOXパートナーである株式会社DATAFLUCTの浅見様からのご紹介を通じて本プロジェクトへご提案し、ビジョンムービー制作の伴走パートナーとして支援させていただきました。
精緻な長期経営計画を、いかにして全従業員が「自分ごと」として理解できる映像へと昇華させたのか。膨大な情報量を前にした課題感から、パートナー決定に至った背景、そして出来上がった「自分ごととして腹落ちさせる」クリエイティブの裏側について、経営企画部の酒井様と南雲様にお話を伺いました。

写真左から、株式会社DATAFLUCT 浅見 昌佳様、Qoil田中、国分グループ本社株式会社 経営企画部 企画課 南雲 歌乃様、酒井 響様、アイリッジ 柳沼、内田、小野
「正しいけれど、難しくて遠い」 経営計画を前に抱えた課題
──まずは、今回「第12次長期経営計画」の社内向けビジョンムービーを制作することになった背景や、当時の課題感について教えてください。

国分グループ 酒井様(以下、酒井様):当社グループでは5年に1度、長期経営計画(以下、長計)を策定しています。今回、2026年1月から第12次長計が始動するにあたり、まずは全従業員にその内容を周知し、理解を促進したいと考えました。
従業員のモチベーション向上に少しでも繋がればという思いから、短時間で内容を理解できる「ビジョンムービー」を作成しようとプロジェクトが発足しました。
──前回の第11次長計の際にも、動画は作成されていたのでしょうか?
酒井様:いえ、動画を作成するのは今回が初めての試みでした。
動画を制作した経験がない私たちが、短い尺の中にどれだけ従業員が理解できる内容を詰め込めるか。コンテンツのアイデア力が不足していると感じており、その課題を解決してくださる制作会社さんを探していました。
──さまざまな伝達手段がある中で、動画という手段を選ばれたのはなぜですか
酒井様:コミュニケーションプランをゼロから議論する中で、「次世代を担う若手に、いかに自分ごととして、長計を浸透させていくか」という課題感がありました。
私自身も、自分ごと化することの難しさを感じていました。そこで、どんなコンテンツなら全従業員が興味を持ってくれるかを議論した際、プロジェクトの若手メンバーから「動画が一番身近なのではないか」という意見が上がり、動画制作に踏み切りました。
「何を伝えるか」の前に「どう関心を惹くか」 動画の本当の役割を再定義する
──複数社からの提案があったとお聞きしています。最終的にアイリッジグループ(Qoil)を選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか?
国分グループ 南雲様(以下、南雲様):初期ヒアリングをとても丁寧にしていただいたことが大きかったです。
当社の300年続く歴史や文化、そして今回の長計で伝えたかった食品流通業界全体の変化や2050年を見据えた「食の安全保障」に対する「危機感」といった重要なキーワードを、ボリュームの多い長計の中から一つずつ的確に汲み取っていただけたと感じました。従業員のモチベーションを向上させるうえで、そういった本質的な部分を理解していただけたことが一番の決め手です。
酒井様:提案を聞いた後、プロジェクトメンバーですぐに打ち合わせをしたのですが、実は満場一致でアイリッジグループさんに決定しました。悩むまでもありませんでした。
──それは大変光栄なお言葉です。具体的に提案のどの部分が響いたのかお聞きできますか

酒井様:今回の目的の一つに「動画をきっかけにして、長計を分かりやすく紐解いた冊子である『長計のココロ』を手に取ってもらう」ということがありました。
Qoilさんからの提案は、単に危機感を煽るだけでなく「これからどうやっていくんだろう」と想像させるストーリー性があり、私たちが持っている既存ツール(冊子)に綺麗に繋がるように設計されていました。プロジェクトの意図にしっかりと寄り添っていただけたと感じました。
──アイリッジ・Qoil側としてのお話を田中さんに伺います。最初にご相談いただいた際、課題感をどう受け止め、企画に落とし込んでいったのでしょうか
Qoil 田中(以下、田中):お話を伺い、資料を拝見して最初に感じたのは、発信側である皆様の「熱量の高さ」と「伝えたい情報の多さ」でした。
一方で、受け手となる現場の従業員の方々の視点に立つと、日々の業務がある中で「なぜこの膨大な情報を今見ないといけないのか」と、どうしても後回しにされてしまうリスクがあります。
今回も、動画以外にも様々なツールをご用意されるということでしたので、このリスクを回避することが重要だと考えました。
そのため、まずは「動画が担うべき本当の役割」を整理するところから始めました。詳細な情報の定着という点では既存の冊子の方が優れています。だからこそ、今回の動画はあくまで「心を動かし、冊子を開くためのアテンション(関心)を獲得すること」に振り切るべきだとご提案しました。
他にも、動画に対するコストの観点から、汎用性を持たせてさまざまな場面で使えるようなものにするなど、単なる映像制作ではなく、コミュニケーション全体の設計から入ることを第一に考えました。
理解を超えた「共感」、そして行動変容へ。8分の映像に込めたクリエイティブの力
──パートナー決定後、実際の制作フェーズにおいて国分グループ様が重視されていたポイントやこだわりを教えてください。

酒井様:今回は私たち経営企画部が事務局となり、長計を策定する「策定委員」の意思決定も仰ぎながら進める必要がありました。
そのため、コミュニケーションの円滑さを最も重視していました。約2ヶ月というかなりタイトなスケジュールで納品をお願いしたのですが、アイリッジグループの皆さんは私たちの要望に対してすぐに提案や修正対応をしてくださり、非常に助かりました。
南雲様:動画の構成としてのこだわりは「長さ」ですね。忙しくて席にいる時間が短い従業員も多いため、「10分以内」に情報を詰め込みながらも飽きさせないようにしたい。でも、ただ危機感を煽るだけで終わらないでほしいという思いがありました。
アイリッジ 小野:そのようなご要望をお聞きしたうえで、私たちからはより見やすくするために「6〜7分程度までまとめていきたいです」とご提案させていただきました。作り込んでいく中で、最終的に8分弱のコンテンツになりました。
田中:長いと見られない可能性が高くなるため、短くしたいという意図がありました。また、どのような環境で再生されてもメッセージが伝わるよう、音なしでパパッと見ても印象的なコピーが記憶に残るような構成にしています。
──ロジカルに作られた計画を共感を生む映像にするにあたり、演出面でこだわった部分はありますか?

酒井様: 一番こだわったのは、最後の「長計のココロを開く」シーンです。結局、最後はその冊子を手に取ってほしいので、冊子を開けばより詳細がわかるんだよ、というメッセージをどう伝えるかにこだわりました。
南雲様:私は音の演出が印象的でした。マイナスな表現の時はそれに合った音になり、最後は力づけるような元気な声と映像がマッチしていて、「ここから発展していくんだな」ということを映像と音の力で実感しました。
──今回、映像のディレクションに映画監督経験者を起用されていましたよね
田中:社内向けのビジョンムービーは外部の目に触れないため、ともすれば「情報を並べるだけ」の無難な演出で済ませてしまうことも少なくありません。
しかし、今回のように難易度が高く、かつ重要な経営計画を「自分ごと」として見てもらうためには、かなり工夫が必要だと思いました。そこで、映画やCMなど人の心を動かす映像表現に長けた監督であれば「見てもらう工夫」ができるのではと考えて起用させていただきました。
完成した動画がもたらした反響と、プロジェクトの過程で得られた「言語化」の資産
──完成した動画に対する社内外の反響や、実際の活用状況はいかがですか?
酒井様:全従業員が見る社内用サイトに1ヶ月ほど掲載したのですが、アクセス数も順調に伸びました。
各部署のミーティング等でも流していただいていると聞いています。私自身、同期から「動画見たよ」と声をかけてもらい、しっかりと啓蒙できているなと実感しました。
南雲様:最近では、展示会(スーパーマーケット・トレードショー)などの外部イベントでも他部署から「動画を使いたい」という声が上がっています。最初の周知だけでなく、振り返りのコンテンツとしても使われていますね。新人研修でも、長計を説明する際に活用する予定です。
DATAFLUCT 浅見様:ちなみに、私がやり取りしている国分グループ様のサプライチェーン部門の方からも反響がありました。実績データと向き合って根を詰めていたときに、ふと「そういえば浅見さんが関わった動画があったな」と思い出して再生してくれたそうなのですが(笑)。
集中力が途切れてきていた中でも「すごく脳に響いた」とおっしゃっていました。現場の従業員の方にも深く刺さっているようです。

──動画の完成という成果だけでなく、プロジェクトを進める過程を通じて、皆様ご自身に新たな気づきや変化はありましたか?
南雲様:動画を作る過程で、長計の意義や要点を自分たちの中で改めて整理できました。私自身、動画制作に携わるのが初めてだったので、その点でも貴重な体験になりました。
酒井様:今まで長計の策定に携わる中でインプットは多かったのですが、それを動画として社内に発信していく過程で、「自分自身の中でしっかり言語化できるようになった」というのが一番大きな変化であり、気づきだったと思います。
──最後に、アイリッジ・Qoilの伴走支援について、率直なご感想をお願いします

南雲様:タイトなスケジュールの中で本当に完成するのかという不安もありましたが、納期をしっかり守っていただき、内容も重要なキーワードを盛り込みながらコンパクトに抑えて制作していただきました。ご依頼してよかったなと感じています。
酒井様:終始コミュニケーションがスムーズに進んだことが一番大きかったです。
私たちは事務局として、アイリッジグループ様と策定委員の間に立って意図を伝えることに苦労する場面もありましたが、私たちが表現したいことをしっかりと映像に落とし込んでいただき、非常に満足しています。
田中:我々としても、単なる制作会社としてではなく、一歩踏み込んで伴走し、一緒に会話しながらお仕事をしていくことを大切にしています。
今回、映像そのもののクオリティはもちろんですが、そうした「伴走する姿勢」までを含めて評価していただけたのであれば、プロとしてこれ以上嬉しいことはありません。
──本日は貴重なお話をありがとうございました

(取材:下坂乃奈子 / 文:澤田おさむ / 写真:關雛子)
アイリッジグループのインナーブランディング支援
アイリッジおよびQoilでは、企業の経営課題に寄り添うブランディングやインナーコミュニケーションの支援を行っています。
精緻な戦略や想いを紐解き、社員の「自分ごと化」を促すコミュニケーションデザインの設計から、クリエイティブのアウトプットまでを一気通貫でご支援します。
社内浸透や理念浸透に課題をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

