アメリカでオムニチャネルが加速する?
アメリカではここ数ヶ月の間で大手企業が新興ベンチャーのE-Commerce企業を買収するニュースが出てきました。今回は、こちらのニュースを取り上げながら、今後のオムニチャネルについて見ていきましょう。
ユニリーバが10億ドルでDollar Shave Clubを買収
Dollar Shave Club 公式サイト: https://try.dollarshaveclub.com/try-the-club
1つ目は、ユニリーバがDollar Shave Clubを買収したニュースです。Dollar Shave Clubは設立5年を迎える新興E-Commerceで、髭剃りをサブスクリプションモデルで提供しています。ユニリーバは売上1300億ドルを超える大手グローバル企業のため、10億ドルという金額はそれほど大きなものではありません。しかし、この企業が魅力的に見えたのは、以下の理由からだと考えています。
オンラインチャネルの強化
新興ベンチャーといえども、すでに会員を320万人以上抱えているネット企業です。ユニリーバはオフラインのスーパーマーケットなどに強い販売チャネルを持っていますが、今後ECサイトの利用が増えていくことを考えると、オンラインチャネルを強化していく必要があります。特にオンライン上では、Amazonという強力なE-Commerce企業がいます。ユニリーバとしても、Amazonにオンラインでの販売機会を独占されるという懸念もあったことでしょう。
オンライン・マーケティングの強化
Dollar Shave Clubの持つ320万人の会員は、男性用髭剃りを中心としたサブスクリプション会員です。このメンバーに対してマーケティングを行えることは、同様の製品を扱うユニリーバにとって魅力的だと考えられます。髭剃りのほかに男性用の洗顔、スキンケア、整髪製品も扱っていることから、今後親和性の高いユニリーバの製品が並ぶことも考えられるでしょう。
Dollar Shave Clubの成長性
Dollar Shave Clubは設立5年で売上2億ドルを計画していました。そこにユニリーバの国際的な流通チャネルを提供することで、さらなる成長が期待できると考えたのでしょう。
ウォルマート、E-Commerce新興企業Jet.comを33億ドルで買収
Jet.comの公式HP : https://jet.com/
次のニュースは、ウォルマートがE-Commerceの新興企業であるJet.comを買収したというものです。Jet.comは、もともとDiapers.comという会社を設立してAmazonに売却したMarc Lore氏が新たに設立した会社で、正式リリースが2015年7月、わずか1年足らずのサービスです。それでも、Jetは1カ月あたり40万人の新規顧客を獲得しており、1日あたり平均2万5000件の注文を処理しているとのことです。
ウォルマートにとってこの買収は、明らかにAmazon対策です。Walmart.comの成長の遅れを取り戻そうとJet.comを買収し、既存のウォルマートのアセットを活用することで成長をドライブさせていくことを試みています。
まとめ
2つのニュースはともに、新興ベンチャーのE-Commerceサービスが、大手消費財メーカーや大手小売企業に買収されるニュースです。しかも、それぞれにAmazonに対する施策とも考えられます。E-Commerceはサービスの特性から在庫管理や流通、決済など、通常のネットサービスよりも投資が大きいビジネスになります。それを大手企業がどうサポートしながら、Amazonに対してどのようなアプローチをとっていくのか今から楽しみです。