顧客に愛される小売DXの4要素は”消費者目線、ゴール設定、組織、ローカライズ”|リテールDXプラットフォーム 5社共催ウェビナーレポート
写真上段:左から、ファシリテーター 向井氏、アイリッジ 井上、ワイヤ・アンド・ワイヤレス 川村氏、
下段:データセクション 平本氏、Flow Solutions 松本氏、Qoil 末廣
※本記事では、2021年12月15日に開催された5社共催ウェビナー「リテールDXプラットフォーム」の様子を一部抜粋してお届けします
▼パネリスト&ファシリテーター紹介 株式会社アイリッジ 株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス データセクション株式会社 株式会社Flow Solutions 株式会社Qoil Well Direction, Inc |
最新のリテールテックテクノロジーは本当に使えるのか?
5社の業務提携により2021年8月に提供開始した「リテールDXプラットフォーム」のイメージ図。企業のアプリと ※参考:プレスリリース / IoT NEWS 掲載記事 / New Retail Navi 掲載記事 / DX MAGAZINE 掲載記事 |
ファシリテーター 向井氏:中立的な立場としてあえて切り込んでいきたいんですが。
デジタルを使ってシームレスな体験を作っていこうという概念は数年前からあり、様々なツールやベンダーが存在するにも関わらず、現実的にはこれを実現できている事業会社(小売企業)がなかなかいないと思っています。
これまでなぜそうだったのか、いまなぜこの5社が実現できるようになったのか、順番にお聞きできますか。
Qoil 末廣:事業会社側がやりたいことが消費者にまで伝えきれていないのではないかと思います。
我々と取引先の事業者の間では新しいサービスについて話が盛り上がっても、消費者に利点だと思ってもらうのが難しい。
弊社はショールーミング店舗の運営もしているので、その場を見ていても思うんですが、”(人を)動かしたい”と思うターゲットの方々のところまで、どううまくメッセージ化して届けて、利点だと思ってもらえるか、ユーザー目線のコミュニケーションが課されているミッションだと考えています。
データセクション 平本氏:手段が先行して目的がふわふわしているケースが多かったと考えています。
例えばOMOという言葉は、オフラインとオンラインをマージするという手法を指しています。
それが、以前はマージすること自体が目的になって、マージした結果どうするのかがクリアになっていない案件が多くありました。
ですが最近は明確な目的をもった相談が増えてきていますし、我々もデータをどう売上や利益につなげていくかがナレッジ化されてきました。
こういうことがOMOに限らずIT化の様々な場面で起こっていて、ようやく目的と手段がつながるようになってきたのではないかと感じています。
ボトムアップ?トップダウン?組織課題へのアプローチは
ワイヤ・アンド・ワイヤレス 川村氏:組織の中でマーケターがあまり力を持っておらず、また組織のトップもデジタルでできること・できないことをあまり理解していないと、デジタル化で成果を上げてもそれを正しくジャッジできずに次の投資につながらず、結果としてうまくいかなくなってしまう状況はあると思います。
ファシリテーター 向井氏:上層部がデジタルやITに理解がない場合、ボトムアップで局所的に成功例を作って全体に広げていくか、上層部を啓蒙してトップダウンで進められるようにするか、どんなふうに変えていくといいと思われますか。
ワイヤ・アンド・ワイヤレス 川村氏:組織によるものの、小さな成功を重ねていくのが今の日本の状況では現実的ではないかと思っています。
アイリッジ 井上:デジタルシフトの推進にあたっては、デジタル部門と店舗・現場との連携が大きなポイントです。
例えば、デジタル部門の指標はアプリがいかにダウンロードされて使われたかですが、店舗は売上が指標になります。
ECサイトの売上が店舗の評価に結び付かないということもあり、いかに共通の目標を持てるかが重要と考えています。
Flow Solutions 松本氏:私が考える要因は、何をもって成功とするかの指標が明確ではないこと、部署を横断したプロジェクトで旗振りができる人員が用意できていないこと、他社の成功事例をうまく自社にローカライズ(応用)できていないことの3つです。
サービスやツールを導入することはゴールではなくスタートなので、会社の文化や経営も進化し続けなくてはいけないのが一番のハードルかもしれません。
DXは売上増だけでなく、従業員の幸せにも貢献する
ファシリテーター 向井氏:成功の指標と言うと最終的には売上・利益が当然あると思うんですが、アプリダウンロードやECへの遷移というようなプロセスとしての指標だったり、何かそれ以外のいい指標はありますか。
Flow Solutions 松本氏:最近、データの活用が「働く上でのマインド」にいい影響があるのではと感じています。
例えばSalesforceを導入すると、モチベーションがアップしたり働きやすくなったり、チーム力が上がったりという効果がありますよね。
そういった、人に働きかける効果が出ているかを意識してます。
ファシリテーター 向井氏:なるほど。ビジネスの売上を定量的に測定するだけでなく、もう1つの側面としては例えばエンプロイーエンゲージメントを指標として取り入れてもいいんじゃないかということですね。
DXによっていかに従業員が楽しく幸せに働けるか。これは面白いな。
リテールDXが消費者に提供する機能的価値と情緒的価値
ファシリテーター 向井氏:ここまでのお話で、事業者側の実現のポイントやメリットはイメージが明確になりました。
一方で、リテールDXプラットフォームが導入された時、消費者にとってはいったいどんなプラスがもたらされるんでしょうか。今度は逆の順でお願いします。
Flow Solutions 松本氏:買い物が楽しくなることですね。今後オフラインとオンラインのマージが進んでいくことで、店舗で見た後にオンラインで買う、オンラインで見た後に店舗で買う、という楽しさが増えていくのではないでしょうか。
アイリッジ 井上:アプリで見ていたものの売場を店舗で一から探さずに済んだり、いつでもどこでもすぐ手に入るという利便性です。
提供価値を突き詰めるとそこに至るのではと思います。
ファシリテーター 向井氏:逆に言うと現状ユーザーさんは何か欲しいなと思った時に、その目当てのものに到達するまで手間や時間がかかったり、ストレスが生じたりするリスクがあるということですね。
ストレートに目当てのものに到達できて、簡単に購入できることが大きな価値になると。
ワイヤ・アンド・ワイヤレス 川村氏:お店からスマートフォンなどを通じて届く、不要な通知がなくなるのではないでしょうか。
DXによって、ネガティブな感情につながるような通知を減らし、適切なタイミングで適切な人に適切なコミュニケーションを取れるようになります。
データセクション 平本氏:楽しい、便利、ちょうどいいがキーワードになると思います。
これからは、その度合いがどんどん進化していくのではないかと感じています。
Qoil 末廣:購入に至るまでの道筋をわくわくするものに設計できるようになっていくのではと考えてます。
いろいろな情報を得ながらお客様主体で体験を選び、新しい購買行動をしていただけると思います。
ファシリテーター 向井氏:みなさん、ありがとうございます。”楽しい、便利、ちょうどいい”はいいですね。
機能的価値はもちろん、情緒的価値も含めて”いい体験”に寄与していくプラットフォームであることがよくわかりました。
このウェビナーを聞かれている方々も、こういった体験を提供したいと思いながら、前半のお話で出たボトルネックに思い当たる方いらっしゃると思います。
そういう方はぜひ、そのつまづきポイントをまず投げてみていただけたら、いきなりソリューションを提案するのでなくきちんと相談に乗ってくれる5社ですので、安心してコミュニケーションを取っていただけたらと思います。今日はみなさんありがとうございました。
https://iridge.jp/service/appbox/