ミニアプリとは?メリット・デメリット・できること等を解説
近年、スマートフォンの普及によりアプリケーション(アプリ)は私たちの日常生活に欠かせない存在となりました。
さまざまなサービスや機能を提供するアプリが数多くリリースされており、その利便性の高さにより、多くのユーザーに愛用されています。
そんな中、特に注目されているのが「ミニアプリ」です。
ミニアプリとは、アプリ内で動作するアプリのことで、元になっているアプリを持っていれば、新しくダウンロードすることなく利用できます。
そこで本記事では、ミニアプリの基本的な概念から注目されている背景、そして具体的なメリットやデメリット、開発手順、導入事例などを解説します。
アプリの導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
ミニアプリとは
「ミニアプリ」とは、スマホやタブレットで使用するアプリケーション(アプリ)の一種で、アプリ内で動作するアプリのことを指します。
スーパーアプリと呼ばれるアプリをプラットフォームとして動作するため、通常のネイティブアプリのようにスマホにダウンロードする必要がないのが特徴です。
ミニアプリの例としては、メッセンジャーアプリの「LINE」をスーパーアプリとして動作する「LINEミニアプリ」が挙げられます。
ミニアプリは、スマホの容量を圧迫せず、ユーザーの利便性や効率性を向上させることができるため、近年注目を集めています。
ミニアプリが注目されている背景
ミニアプリが注目されている背景には、主に2つの要因があります。
まずは、繰り返しになりますが、ダウンロードする手間が必要ないことです。
通常のネイティブアプリはユーザーにダウンロードしてもらう手間が発生するため、利用までのハードルがあり、スマホのストレージを圧迫するなどのデメリットがありました。
しかしミニアプリなら、1つのスーパーアプリを保有していれば数多くのミニアプリが利用できます。
その手軽さから、多くのユーザーに利用されるようになってきています。
また、スマホやタブレットの普及に伴いネイティブアプリ市場の開発競争が激化していることも、ミニアプリが注目されている理由の1つといえます。
せっかく大きな費用や時間をかけてネイティブアプリを開発しても、ダウンロードされなかったり、一度使っただけでアンインストールされたりしたら意味がありません。
一方、ミニアプリであればダウンロードの手間なく利用できる上、アンインストールされるリスクはゼロに近いといえます。
これらの要因が合わさり、近年ミニアプリはますます注目され、普及が進んでいます。
ミニアプリでできること
現在、日本で利用されているミニアプリの多くは、メッセンジャーアプリ「LINE」もしくは決済アプリ「PayPay」で利用できるものです。
この2つを例に挙げて、ミニアプリでできることを見てみましょう。
■「LINE」で利用できるミニアプリ例
- 「LINE MUSIC」:
数千万曲以上の音楽を聴いたり、MV(ミュージックビデオ)を観たりできる - 「LINEマンガ」:
さまざまなジャンルの漫画やLINEマンガオリジナルの作品を楽しめる - 「ジョルダン」:
電車やバスの乗換えを検索できる
■「PayPay」で利用できるミニアプリ例
- 「PayPayフリマ」:
個人間でさまざまな商品の売買ができる - 「さとふる」:
ふるさと納税の申し込みができる - 「TOHOシネマズ」:
TOHOシネマズの映画のチケットが購入できる
これらのミニアプリはそれぞれ「LINE」「PayPay」上で完結するため、別のアプリをインストールする必要がありません。
例えば「ジョルダン」なら検索した乗換案内の内容をそのままLINEでメッセージすることができますし、「TOHOシネマズ」なら決済まですべてPayPay上で完了できます。
このように、ミニアプリは各スーパーアプリの特徴を活かしたサービスをユーザーに提供できるため、利便性の向上や顧客のファン化に役立ちます。
ミニアプリのメリット
ミニアプリには、以下のようなメリットがあります。
- ユーザーに使ってもらいやすい
- メッセージの開封率が高い
- 開発や宣伝にかかるコストを削減できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1 ユーザーに使ってもらいやすい
ミニアプリは、ダウンロードの手続きが不要かつスマホのストレージを圧迫しないため、ユーザーにとって利用までのハードルが低いという特徴があります。
従来のアプリの場合、アプリストアを検索してダウンロードし、その後に利用登録したり個人情報を入力したりしなければなりません。
しかし、ミニアプリはリンクをクリックするだけで利用できるため、ユーザーの手間と時間を最小限にすることができるのです。
また、ミニアプリはすでに持っているスーパーアプリ上で利用できるため、使用するたびにアプリを切り替える必要がありません。
初めてのユーザーや一時的なニーズを持つユーザーでもストレスなく利用できることから、利用してもらえる可能性が高いのです。
メリット2 メッセージの開封率が高い
ミニアプリは、ユーザーが日常的に利用しているアプリ上で動作しているため、メッセージの開封率が高い傾向にあります。
特にLINEミニアプリであれば、LINEでメッセージが来るため、思わず開いてしまうという方も多いのではないでしょうか。
プッシュ通知を活用したり、友人間で共有しやすい仕組みを作ったりすることで、よりユーザーの関心を引きやすくできるでしょう。
メリット3 開発や宣伝にかかるコストを削減できる
ミニアプリは、従来のアプリよりも開発や宣伝にかかるコストを削減することができます。
通常のネイティブアプリの場合、iOSやAndroidなどの複数のプラットフォームに対応させるために、それぞれに対して個別の開発が必要となります。
一方、ミニアプリはプラットホームとなるスーパーアプリに対応した開発1つで済むため、開発コストを削減できます。
また、ミニアプリはアプリストアを介さずに利用できるため、アプリストアへの登録料や販売手数料が不要です。
さらに、ミニアプリはすでに多くの人に利用されているスーパーアプリ上で展開するため、宣伝にかかるコストも削減できるでしょう。
ミニアプリのデメリット
ミニアプリにはさまざまなメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。
- 実装できる機能やデザインに制限がある
- 他社のアプリに埋もれてしまう可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
デメリット1 実装できる機能やデザインに制限がある
ミニアプリはすでにあるスーパーアプリ上で動作するため、実装できる機能やデザインに一定の制限があります。
一般的なアプリと比較すると、どうしてもオリジナリティが出しにくくなってしまうのです。
オリジナルの機能を実装させたい、他にはないデザインにしたいという場合は、ネイティブアプリを開発するのがおすすめと言えます。
デメリット2 他社のアプリに埋もれてしまう可能性がある
ミニアプリは、「LINE」や「PayPay」上からアクセスして利用するケースが多いです。
しかし、これらのプラットフォーム上では多くのミニアプリが競合しており、ユーザーの目に留まることが難しい場合があります。
ネイティブアプリのようにスマホのホーム画面に残ることもないため、ユーザーにミニアプリの存在自体を忘れられてしまうこともあるでしょう。
他社のミニアプリに埋もれてしまうことを避け、継続的に利用してもらうためには、適切な宣伝やマーケティングの戦略が必要になります。
LINEミニアプリの開発手順
ミニアプリは、スーパーアプリからの開発資格・許可を得れば誰でも開発可能です。
ここでは、LINEミニアプリを例に挙げて、開発手順を詳しく解説します。
手順1 LINEから開発資格・許可を得る
LINEミニアプリを開発しようと思ったら、まずはまずLINEの開発資格・許可を取得する必要があります。
LINEの提供する「LINE Developers」と呼ばれる開発者向けプラットフォームに登録し、必要な情報を登録しましょう。
開発資格を取得することで、LINEミニアプリの開発に必要な「LINEミニアプリチャネル」にアクセスできるようになります。
手順2 開発
開発資格・許可を得たら、「クイックスタートガイド」および「LINEミニアプリポリシー」を熟読した上で、開発を行いましょう。これらには、作業の流れやガイドライン、規約などが記載されています。
LINEミニアプリは、LIFF(LINE Front-end Framework)というLINE社独自のフロントエンドフレームワークを用いることで開発できます。
自社にノウハウがないという場合は、開発会社に依頼したり、LINEが提供しているパートナープログラムを活用したりするのがおすすめです。
また、LINEミニアプリでは個別開発(自社に合わせて1からミニアプリを開発する方法で、時間はかかるがオリジナリティが高い)とパッケージ開発(フォーマットを利用してミニアプリを開発する方法で、機能に制限はあるものの短期間でリリース可能)のどちらかを選んで開発できます。
それぞれ特徴が異なるため、自社のニーズや状況に合わせて選びましょう。
手順3 審査
アプリの開発が完了したら、LINEが定めるガイドラインに従って審査に提出します。
審査では、LINEのポリシーやセキュリティ要件を順守しているか、ユーザーエクスペリエンスが良好であるかなどが確認されます。
審査に通過すれば、アプリはLINEミニアプリとして公開され、ユーザーが利用できるようになります。
LINEミニアプリの導入事例
ここからは、LINEミニアプリの導入事例を紹介します。
飲食業界や小売業界、美容業界などさまざまなジャンルの店舗事例を紹介しますので、要チェックです。
また、各事例の詳細のほか、さらに多くの事例を知りたいという方は、こちらもご覧ください。
飲食業界の事例「スシロー」
大手の外食チェーンの回転寿司「スシロー」では、店舗の待ち時間が長いことが来店客のストレスや店舗へのマイナスイメージにつながることを課題に感じ、順番待ち機能を実装したミニアプリを開発しました。
店舗で受付をするとLINE上で受付番号が発行され、時間になるとLINEで通知してくれるという仕組みです。
このアプリを利用するために会員登録がいらないこと、さらに利用すればするほどポイントが貯まり、特典に替えられることが魅力となり、ユーザー数が大幅に向上しました。
店舗での待ち時間解消にもつながり、顧客のストレス軽減やリピート率向上も実現させました。
(参照:LINEミニアプリ業種別事例集)
小売業界の事例「PAL CLOSET」
「PAL CLOSET」は、数多くのアパレルブランドや300円均一ショップ「3Coins」を運営する企業です。
LINEミニアプリを導入した結果、これまでネイティブアプリで取りこぼしていたユーザー層の登録が大幅に増加しました。
新規会員数は前月比で約2倍、ミニアプリに連携していたLINE公式アカウントの友だち数も1カ月で10万人増加するなどの成功を収めました。
また、ユーザーとの接触機会が増えたことでLINE経由でのECサイトの売上が前年比で5倍に増加するなど、OMO(Online Merges with Offline:オフラインとオンラインの融合)の実現にもつながっています。
(参照:LINEミニアプリ業種別事例集)
美容業界の事例「カネボウ化粧品」
全国各地の百貨店・デパートに多くの店舗を展開している「カネボウ化粧品」。
コロナ禍によって店舗での接客が制限されたことをきっかけに、展開している3つのブランド「SENSAI」「KANEBO」「LUNASOL」それぞれでLINEミニアプリを導入しました。
会員証提示や購入履歴閲覧、店頭肌測定結果の結果確認など、これまでのネイティブアプリでも人気だったサービスを中心に実装させた結果、会員化率120%、メッセージ開封率143%を達成しています。
クリック率も10〜15%前後を記録し、これはネイティブアプリと⽐較して約2倍の数値となりました。
(参照:LINEミニアプリ業種別事例集)
金融業界の事例「三井住友カード」
2021年5月、金融業界として初めてLINEミニアプリを導入したのが「三井住友カード」です。
IDとパスワードによる毎回のログインなし(ID連携は必要)で支払金額や利用明細、ポイント残高の確認、各種変更手続きなどを利用できるアプリを開発しました。
その結果、「これまでログインが面倒でネイティブアプリを利用していなかった」というライトユーザー層の獲得に成功しました。
導入からわずか1週間でID連携数は約8倍を記録し、その後も約5倍のペースで増加しています。
さらに、LINEミニアプリ登録時にLINE公式アカウントが友だち追加される設定にしておいたことで、顧客とのコミュニケーションの強化に成功。
顧客情報に合わせてメッセージを送ることで、開封率は70%まで伸びたそうです。
(参照:LINEミニアプリ事例「金融業界初!会員サービス「Vpass」のID連携数を5倍に伸長させた三井住友カードのLINEミニアプリ活用」)
ミニアプリの今後の展開
ここまで解説したように、ミニアプリは利用者側・事業者側双方にとってメリットが多く、実際にこれまでさまざまな業界の多くの企業・店舗で導入が進んでいます。
ミニアプリ市場はまだ新しい領域ですが、今後はさらなる機能の拡充やプラットフォームの拡大とともに、市場の拡大が進むと予想されます。
開発者や事業者がミニアプリの可能性に気づき、新たなアイディアやビジネスモデルが生まれることでしょう。
また、ユーザーにとっても利便性が向上し、より広範な層に受け入れられることが期待されます。
また、ミニアプリはユーザーの個人情報を扱うことがあるため、今後はデータセキュリティとプライバシー保護がより重要なテーマとなるでしょう。
事業者や開発者は、ユーザーの信頼を得るため、セキュリティ対策やプライバシーポリシーの強化に取り組むことが重要です。
まとめ
スマホの容量を圧迫せず、ユーザーの利便性や効率性を向上させることができるミニアプリは事業者側にとってもメリットが多く、実際にさまざまな業界で導入が進んでいます。
ミニアプリは今後ますます進化し、私たちの日常生活やビジネスにさらなる変革をもたらす可能性を秘めています。
開発者やビジネスにとっては、新たなチャンスと挑戦が待っていると言えるでしょう。
アイリッジでもLINEミニアプリの開発を承っています。
ネイティブアプリを使っていないライトユーザーにアプローチしたいなど、LINEミニアプリの活用をご検討されるのであれば、ぜひお問い合わせください。