UXデザインプロセスを7ステップで解説!実行に役立つフレームワークも紹介

ユーザーにとって使いやすく、満足度の高い商品・サービスをつくるには「UXデザインのプロセス」を理解することが欠かせません。しかし「どこから手を付ければよいのか」「具体的に何をすればよいのか」と悩む方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、UXデザイン初心者の方にも取り組みやすいように、プロセスを7つのステップに整理して解説します。さらに、実際の現場で役立つフレームワークもあわせて紹介するので、基礎を学びながらすぐに実践に活かしたい方は、ぜひ参考にしてください。
UXデザインプロセスとは?

そもそもUXデザインとは、ユーザー一人ひとりが主観的・時間的・状況的な側面も含めて一連の体験のプロセスを設計することを指します。ユーザーが商品やサービスを利用する中で、「使いやすい」「心地いい」「また使いたい」と思えるように設計していきます。
そんなUXデザインを設計するための方法論として、UXデザインプロセスが存在します。UXデザインプロセスはユーザーにとって価値のあるUXになるよう、デザイナーが取り組むプロセスになります。ユーザーのあらゆる課題・ニーズを把握し、分析することで価値のあるUXを実現していくのです。
UXデザインプロセスの重要性
企業がUXデザインプロセスに取り組むべき理由として、以下の理由が挙げられます。
- ユーザーをよく理解しないままデザインすることを回避するため
- 手順を踏むことで洗練されたデザインに仕上げるため
- チーム内だけでなくステークホルダーも進捗状況が追跡できるため
UXデザインは、ユーザーにとって価値のある体験を提供できなければ意味がありません。そのため、まずはユーザーの課題やニーズを把握・分析する必要があります。UXデザインプロセスは優れたUXを実現するための手順となるため、「ユーザーは○○だろう」という思い込みや偏見からデザインすることを防ぐことが可能です。
また、UXデザインプロセスがあることで、現在プロジェクトがどこまで進んでいるのか進捗状況を確認しやすくなります。特にチーム内だけでなくステークホルダーも進捗状況を追跡することが可能です。ステークホルダーが進捗状況を定期的に知ることで、チームや企業に対する信頼性を確保できます。
UXデザインプロセスとデザイン思考プロセスの違い
UXデザインプロセスと似ている言葉に、「デザイン思考プロセス」があります。デザイン思考プロセスとは、デザイナーやクリエイターがデザインを考案するときに用いられるプロセスを指します。主に共感・定義・概念化・試作・テストという5つのプロセスを踏むことで、ユーザー視点に立ちながらビジネス上の課題解決に役立つ思考法です。
一方、UXデザインプロセスはUXデザイン設計にデザイン思考を取り入れた方法論です。つまり、デザイン思考プロセスから派生してUXデザインプロセスが誕生しています。デザイン思考プロセスに基づいているものの、実際の手順や方法などは異なっています。
UXデザインプロセスにおける7ステップ

UXデザインプロセスは、主に7つのステップで構成されています。
- プロジェクトの目的と範囲を明確にする
- ユーザーリサーチで課題とニーズを探る
- ユーザー理解を深めるための分析と可視化
- 理想的な体験を設計・発想する
- プロトタイプで形にし、具体的な体験を構築する
- ユーザビリティテストで問題点を発見・改善する
- 実装・リリース後も評価と改善を繰り返す
各ステップについて詳しく解説していきます。
ステップ1:プロジェクトの目的と範囲を明確にする
UXデザインプロセスでは、いきなりデザインを設計するのではなく、まずはプロジェクトの目的と範囲を明確にしていきます。「なぜこのプロジェクトを行うのか」「誰のために何を解決するのか」を、最初に決めておくことが大切です。目的や範囲が曖昧だと、完成した商品・サービスがユーザーのニーズとズレていたり、関係者同士で認識が違っていたりするリスクもあります。
このステップで整理しておきたいのは、以下のポイントです。
- プロジェクトの目的(達成したゴールの具体化)
- プロジェクトの範囲(対象の機能・サービス領域)
- ターゲットユーザー(ユーザー層や主な利用シーン)
- 成功指標(成果の測定方法)
ステップ2:ユーザーリサーチで課題とニーズを探る
UXデザインを設計するためには、まずユーザーについて知る必要があります。そのため、次に行うステップはユーザーリサーチになります。ユーザーリサーチでは、定量調査と定性調査をどちらも行うのが基本です。
定量調査だと数字などの定量的なデータを取得できるため、分析もしやすくなります。しかし、定量的なデータだけだとよりユーザーの感情的な部分を理解できません。そのため、ユーザーの課題とニーズをより深く知るために、定量調査と定性調査の両方を行う必要があります。例えば、以下の調査方法が活用されています。
- ユーザーへのインタビュー
- 消費者アンケート
- 市場調査
- 競合調査
- 既存製品の調査
ステップ3:ユーザー理解を深めるための分析と可視化
ユーザーリサーチの結果が出たら、その結果に基づいて分析を行っていきます。ユーザーニーズの分析によって、1つの課題・ニーズに対してユーザーはどういった体験を求めているのか理解できるようになります。
分析方法にもさまざまな種類がありますが、主にカスタマージャーニーマップなどのフレームワークを活用するケースが多いです。フレームワークについては後ほど詳しく説明しますが、ユーザーへの理解を深め、可視化することでプロジェクトに関わる人全員が共有しやすくなります。
ステップ4:理想的な体験を設計・発想する
ユーザーに対する理解が深まり、どのような体験を求めているのかが明確になったら、次に理想的なユーザー体験を設計・発想するステップに移行します。ステップ3ではユーザーが求めているものだけでなく、現状でストレスに感じている部分やデメリットに感じる部分も把握することが可能です。この問題点を解決するにはどのようなUXデザインにしていくべきかを考えていきます。
理想的な体験を実現するUXデザインの発想につながったら、それが実際に生み出せるのか具体的に企画していきます。ブレインストーミングなどでとにかくアイデアを出していき、その中から理想的な体験と実現性を兼ね備えた方法を抽出します。
ステップ5:プロトタイプで形にし、具体的な体験を構築する
UIデザインを担うチームは、抽出されたアイデアを元に理想となるUIデザインを設計し、プロトタイプを制作します。プロトタイプは最終的な製品とほとんど同じ見た目・機能が備わったサンプルです。
プロトタイプを制作することで完成品のイメージが明確になることはもちろん、チーム内やステークホルダーなどの関係者間で商品・サービスに対する認識を共有できるようになります。言葉だけでは表現しにくかった部分もプロトタイプを通して伝えられるため、認識のズレを解消するのに役立ちます。
ステップ6:ユーザビリティテストで問題点を発見・改善する
プロトタイプを制作し、関係者間での認識のズレがなくなったら、ユーザビリティテストを実施します。最終的な形態に近いプロトタイプでユーザビリティテストを実施すれば、ユーザー視点での問題点も把握でき、フィードバックを元にさらなるUXデザインの向上を目指すことも可能です。
ユーザビリティテストではプロトタイプの使いやすさや操作感、満足度などをアンケートで聞き取り、改善点がないか探っていきます。ユーザーリサーチからユーザビリティテストまでのステップは反復することが可能であり、ブラッシュアップしてより理想的なUXデザインに近づけるでしょう。
ステップ7:実装・リリース後も評価と改善を繰り返す
プロトタイプを使ったユーザビリティテストで問題がなく、ユーザーからも高く評価されたら、最終調整を行った上で実装・リリースを行います。実装・リリースさえ完了すればUXデザイナーの仕事が終わると考える方もいますが、実装・リリース後は利用しているユーザーからデータを収集し、評価と改善を繰り返していくことになります。
例えばアプリをリリースしてからしばらく経過すると、ユーザーリサーチを行っていた頃とユーザーの心理が変わっていたり、想定していなかった使い方が発見されたりする場合もあります。リリース後もユーザーに最適化していくためにも、評価と改善を繰り返し、継続的にアップデートをする必要があるのです。
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UXデザインプロセスの実行に役立つフレームワーク6選

UXデザインプロセスを実行する上で、以下のフレームワークが役立ちます。ここで、各フレームワークの特徴と活かし方について解説します。
ユーザー像を明確にする「ペルソナ」
UXデザインの設計において、ターゲットとなるユーザー像を明確にするための「ペルソナ」の作成は欠かせません。ペルソナは、ある特定の顧客またはグループの特徴を反映させた架空の人物設定です。
単にターゲットユーザーを決めるとなると、年齢や性別などが中心となりますが、ペルソナは家族構成や収入、趣味、休日の過ごし方など、より細かく設定を考えていきます。ペルソナを作成するとどのようなユーザーがWebサイトのコンテンツを見ているか、リリースしたアプリのどの機能を活用しているか、などをイメージすることも可能です。ペルソナが実際のユーザー像と近ければ近いほど、ユーザーの体験価値を高めることも可能です。
アプリ企画におけるターゲットとペルソナについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
体験全体を可視化する「カスタマージャーニーマップ」
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスに関わる一連の行動を可視化したものです。カスタマージャーニーマップを作成すると、顧客が最初に企業やブランド、商品を認知してから購入や使用、さらにリピートや口コミで評価するまでの流れがわかります。
UXデザインとカスタマージャーニーマップは関係性が深く、作成することでUXの向上を目指せます。これは、ユーザー視点に立って商品・サービスの接点がわかることで、顧客はどのような行動を取るのか、そのときどのような感情・思考になっているかなどを理解できるようになり、それに応じてUXデザインの改善が図れるためです。
UXデザインに大きく影響するカスタマージャーニーやカスタマージャーニーマップの作成手順を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
抽象的な構想を整理する「ストーリーボード」
ストーリーボードとは、商品・サービスにおけるUXをイラストや画像を用いてストーリー化するフレームワークです。元々はディズニーのストーリー会議でアニメーターが描いたデッサンを、コルクボードに貼り付けてストーリー順に並べたことが始まりとされています。この起源からアニメーション制作や映画制作の現場で用いられてきましたが、UXデザインプロセスのフレームワークとしても応用されています。
ストーリーボードは、顧客が商品・サービスを利用する一連の流れをイラストや画像で表現します。顧客の行動や感情などを視覚的に理解でき、UXデザインの方向性なども捉えることが可能です。また、初期段階におけるアイデア出しなどにも役立ちます。
アイデアの方向性を視覚化する「ムードボード」
ムードボードとは、デザインのイメージやコンセプトをわかりやすく共有するためのフレームワークです。ファッションやインテリア、グラフィックデザインなどの分野で主に活用されていますが、UXデザインプロセスのフレームワークとしても活用できます。
例えばプロジェクトの初期段階だと商品・サービスを視覚的にイメージすることが難しいですが、ムードボードならイメージやテーマカラー、連想させる感情などを表現できます。関連する写真・イラストなどをコラージュのように貼り合わせることで、アイデアの方向性を視覚化できるのです。
情報構造を設計する「ワイヤーフレーム」
ワイヤーフレームとは、Webサイトやアプリのデザインを設計する際にその目的に応じて、「何を」「どこに」「どのように」配置するか表現するための設計図です。ワイヤーフレームでは構成や骨組みなど、情報構造を設計するのに役立つフレームワークであり、要件定義の確定後に設計することが多いです。
似ているものとして「モックアップ」と「プロトタイプ」がありますが、ワイヤーフレームはあくまで情報構造を設計するために用いるため、色や画像は使わずに「情報をどこに配置するか」といったページのレイアウトを決めていきます。一方、モックアップはワイヤーフレームに色や画像を足したものであり、プロトタイプやさらに動きも加えて最終的な商品により近づけたものを指します。
ワイヤーフレームの具体的な作り方やおすすめのツールについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
複雑な体験を俯瞰する「エクスペリエンスマップ」
エクスペリエンスマップとは、ある商品・サービスにおけるユーザー体験で、商品やブランド、企業とユーザーのやり取りを視覚的に表現したフレームワークを指します。エクスペリエンスマップを活用することでUXデザインプロセスを効率化させるだけでなく、より深くニーズを理解できるようになります。
カスタマージャーニーマップと似ている部分もありますが、実際には焦点となるものが異なります。カスタマージャーニーマップでは主に商品やサービスを利用する個人にスポットが当てられますが、エクスペリエンスマップの場合は個人の行動よりもある分野・領域内でユーザーが行う活動全般に焦点を当てています。つまり、エクスペリエンスマップのほうがより広域的な活動・体験を可視化できるのです。そのため、より俯瞰的にユーザーの複雑な体験・行動を表現したい場合に役立ちます。
UXデザインプロセスを成功に導くコツ

UXデザインプロセスを成功に導くためには、以下3つのコツを押さえることも重要です。
ユーザーインタビューはファクトに基づいて設計する
UXデザインプロセスの中でユーザーリサーチを行う際に、実際の利用者からインタビューをする場合もあるでしょう。インタビューによって利用者が抱いている感情や悩みを引き出すことができ、その人も含めてユーザーが求めているものが見えてきやすくなります。
ただし、ユーザーへのインタビューを実施する際に、質問の内容や設計によって回答を誘導してしまう可能性があります。例えば、「○○ですよね?」という聞き方をすると、聞かれた側は「はい」と回答する傾向が強まってしまいます。このバイアスが本質的なニーズと乖離した結果になる恐れもあるため注意が必要です。ユーザーにインタビューを実施する際には、ファクトに基づき設計段階から細心の注意を払って質問内容を考えるようにしましょう。
チーム全体でユーザー視点を共有する仕組みをつくる
理想的なUXデザインを設計したくても、すべてのニーズを取り入れることは基本的にできません。そのため、チーム全体で意見を出し、すり合わせながら最適なUXデザインを設計していく必要があります。このとき、チーム全体でユーザー視点を共有できる仕組みをつくっておくことで、認識のズレを防げます。
例えば、上記で紹介したフレームワークを取り入れることで、視覚的にユーザーの視点や行動などを理解でき、イメージの共有につながります。
判断に迷ったら「ユーザーにとっての価値」を軸にする
商品やサービスを開発していく中で、途中判断に迷ってしまう場面もあるでしょう。ユーザーのニーズを考慮した結果、完成したデザイン設計ではあるものの、開発者側からすると納得のいかないものになっているかもしれません。ここで判断に迷ったら、ユーザーにとっての価値を軸に考えるよう、シフトすることが重要となります。
そもそもUXデザインの基本原則には「ユーザー中心設計(UCD)」という考え方があり、ユーザーの視点で問題を分析し、解決するデザインであることが基本となります。そのため、判断に迷ったときは再度ユーザー視点に立ち返るようにしましょう。
まとめ:UXデザインプロセスを業務に活かそう

ユーザーに選ばれる商品・サービスを生み出すためには、ニーズを的確に捉えたUXデザインを取り入れることが重要です。UXデザインプロセスは、そんなUXデザインを設計するのに必要なプロセスであり、ユーザーニーズに寄り添った商品・サービスを開発するのに活用されます。業務の中にUXデザインプロセスを取り入れて、より良い商品・サービスづくりを目指しましょう。
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