【アシスタントプロデューサーが感じた!アイリッジビジネスプロデューサー入門】第5回:LINE導入で広がる“リアル店舗との新しい関係”。森乳サンワールドが取り組んだ接点再設計のすべて

写真左から、アイリッジ水谷、株式会社森乳サンワールド 営業部マネージャー西川拓郎様 総務部 福島僚太様 生産業務部リーダー 渡辺薫様 営業部マネージャー石賀将之様
BtoBの販売構造を持つメーカーにとって、エンドユーザーとの距離はどうしても遠くなりがちです。森乳サンワールド様も、全国のペットショップや動物病院を通じて商品を届ける中で、「飼い主さんとの接点を増やしたい」「顧客満足度を上げたい」という課題を抱えていました。
今回、同社はLINE公式アカウントとミニアプリを新規導入し、リアル店舗での販促と情報発信をLINE上で一元化する仕組みを構築しました。本記事では、導入前の課題、推進体制、導入プロセス、そして導入後に見え始めた変化を、インタビューをもとに紐解きます。
新しい接点が必要だった理由

森乳サンワールド様の主な販売チャネルは、ペットショップや動物病院、ブリーダーなどのリアル店舗です。これまでの販促は、紙のポイントカードや店頭POPを中心に展開していました。 しかし、このやり方では“即時性”や“費用対効果”に限界が見え始めていました。
新規のお客様にリーチする手段も限られ、ブランドの情報が届くスピードや広がりに課題がありました。そこで同社が重視したのは、”店舗と飼い主さんと自社をつなぐ手段を増やすこと”。そのための新たな接点として、LINE導入の検討が始まりました。
森乳サンワールドがLINEを選んだ理由
導入の決め手は、リアル店舗での購買体験を起点に、飼い主さんとOne to Oneで継続的にコミュニケーションできる環境をLINE上で構築できる点でした。
従来は紙のポイントカードや店頭POPが中心で、リーチの限定性や即時性、効果の可視化に課題がありましたが、LINEなら会員登録のハードルが低く、個々の飼い主さんに合わせた情報提供が可能なため、店舗施策とデジタル施策を連動させた顧客育成に適していると評価いただきました。
また、キャンペーン告知や新商品情報、飼育に役立つコンテンツなどをLINEで定期的に配信することで、参加意欲を自然と高め、来店動機づくりから再来店促進まで一貫したOne to Oneコミュニケーションを実現しています。このように、店頭での販促、飼い主さまへの個別情報発信、キャンペーン参加、再来店までの流れをLINE上で一元的に設計できることが、今回の導入判断における最も大きな価値となりました。
部門横断体制のプロジェクト

今回特徴的だったのは、営業部・生産業務部・総務部の3部門横断で体制を組んだことです。営業部が現場の広がりを担い、総務部が親会社である森永乳業側の審査や契約・経理処理を担当し、生産業務部が商品・物流側の観点を押さえる。 わからないなりに役割を決めたことがスタートで一番良かった点”という言葉が象徴的でした。
デジタル施策が特定部署だけで完結しないからこそ、最初に役割を明確にしたことが、推進力になったといいます。
社内・社外の「やり取りの速度」がプロジェクトを加速させた

今回の導入プロセスで印象的だったのは、ツールそのものよりも、社内・社外を巻き込みながら進める“コミュニケーションの質”がプロジェクトを加速させたという点でした。
森乳サンワールド様の中では、これまで部署間の情報共有が対面やメール中心だったため、同じ情報を持つまでにどうしても時間差が生まれがちでした。しかし今回のプロジェクトでは、チャットツールを利用することにより、“誰が何を判断していて、次に何が必要か”を明確に伝え合う文化が育ち、結果として意思決定がスムーズになっていきました。
とくに印象的だったのは、外部パートナーである私たちも含め、関係者全員が“同じ目線”で議論できる状態ができたことです。完成物だけを共有するのではなく、途中段階のアイデアや懸念点をオープンにし合うことで、互いの誤解が生まれにくくなり、判断のスピードも自然と上がっていきました。
形式的なやり取りではなく、“状況を一緒に見にいくコミュニケーション” が成果に影響したと思っています。
導入直後から見え始めた“一番の変化”
LINE導入後、まだ定量成果が出る前段階でありながら、明確に感じられた変化がありました。 それは、リアル店舗側が想像以上に前向きに取り組んでくれていること。
POP設置やリーフレット配布など、店舗の負担が増える施策にも関わらず、
「新規のお客さんを呼び込むきっかけになる」
「商品をより買ってもらう導線になる」
という期待感が共有され、導入の空気がポジティブに変わったといいます。
LINEを“店舗の味方になる販促基盤”として位置づけられたことは、今後の拡張においても大きな意味を持ちます。
LINEが担う役割はSNSと違う

現在運用中のInstagram/Xが“認知・新規獲得”に強い一方で、LINEは“既存のお客様との継続的な関係づくり”に適している。
Instagram
X
今回の取り組みを通じて、この役割の違いを社内メンバーが共通認識として持てたこと自体が、大きな成果だと語られていました。これまでは、SNS中心の発信では「誰に届いているか」「どんな行動につながっているか」を把握しづらく、施策の効果が見えにくいという課題がありました。しかし、LINEを導入したことで、“友だち追加”という明確な接点から、どのようなお客様なのか、個々の飼い主さんに寄り添ったコミュニケーションができる未来が具体的にイメージできたといいます。
特に営業部では、店頭POPや紙のポイントカードだけでは実現できなかった“リアル店舗とデジタルがつながる感覚”が徐々に共有されはじめ、
「店頭で案内した施策がLINEで続いていく」「継続的な接点をこちらからつくれる」
という、これまでにない手応えが芽生えています。
また、InstagramやXだけではリーチしきれなかった“良質な既存顧客”に対し、LINEならOne to Oneで密にコミュニケーションを深められるという期待も生まれています。
単に情報を届けるだけでなく、“飼い主さんの生活に寄り添うブランド”として存在感を高められるという実感が、現場の中で少しずつ積み重なりつつあります。
こうした意識の変化こそが、今回のLINE導入によって得られた最初の成果であり、今後の施策設計に大きな影響を与える土台になっています。
アシスタントプロデューサーとして感じた、プロジェクト推進の“学び”

森乳サンワールド様との今回のプロジェクトを通じて強く感じたのは、デジタル施策とは“技術を入れ替えること”ではなく、組織全体がどのように動き、顧客に向き合うかを再設計する取り組みそのものだということでした。
LINEの導入は手段にすぎず、真に求められたのは、部署の枠を超えて「同じ飼い主さんの姿」を共有し、リアル店舗とデジタルをどう結びつけるかを考えること。
そのプロセスこそが、メーカーにおけるDXの中心だと実感しました。特に印象的だったのは、営業部・総務部・生産業務部という普段は異なる役割を持つメンバーが、今回のプロジェクトでは“自分たちの視点から貢献できること”を掘り下げ、互いの強みを持ち寄って前に進んでいたことです。部門ごとに重要視するポイントは異なります。しかし、この“違いそのもの”が施策に深みを生み、課題を多面的に捉える力になっていると感じました。
そして改めて実感したのは、最終的な成果はコミュニケーションの質で決まるということです。ただ情報を共有するだけでなく、
「なぜこのトーンにしたいのか」
「どの価値をお客様につたえたいのか」
「店舗ではどのように見え、どんな負担があるのか」
といった“背景まで含めた対話”を積み重ねることで、部署間の理解が揃い、意思決定が驚くほど早くなっていたと思っています。
LINE導入は、店舗、メーカー、そして飼い主さんをつなぐ“新しい関係性”を描き直すプロジェクトでした。この一連のプロセスは、アシスタントプロデューサーとしての視座を大きく押し広げてくれた、かけがえのない経験になりました。
最後に
LINE導入はツールの追加ではなく、接点の再設計だと思っています。
森乳サンワールド様は、リアル店舗を大切にしながら、飼い主さんとの距離を縮め、
ブランド体験を育てる基盤としてLINEを選択されました。
これから始まるキャンペーン運用の中で、どんな顧客体験が育っていくのか。
私たちも伴走しながら、形にしていきたいと思います。
そして次回は「LINEで実現するポイントプログラム」 に焦点を当てていきます。
紙カードでは難しかった“継続利用の可視化”や“再来店の動機づくり”が、デジタル化によってどのように変わるのか。実際の施策構造や運用のポイントを、より深くお伝えします。
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