アプリ開発の企画書で押さえる10のポイント:企画前にやるべきこと等も解説
スマートフォンやタブレットの利用が当たり前となった今、さまざまな業界の企業やブランドがアプリ開発を行っています。
多くのアプリが市場にリリースされる中、優れたアプリを生み出すためには、アイデアを具体化し、明確な計画を策定する必要があります。
そのために不可欠なのが「アプリ開発の企画書」です。
企画書があることで、プロジェクトの方向性を明確化し、アプリ開発を計画的に進められるようになります。
そこで本記事では、アプリ開発に企画書が必要な理由を解説するとともに、アプリを企画する前にやるべきこと、さらに、企画書を作成する際に押さえておくべき10のポイントを紹介します。
また、開発プロセスにおいて注意すべきポイントについても紹介しますので、アプリ開発に取り組む際の参考にしてください。
アプリ開発で企画書が必要な理由
そもそも、アプリ開発ではなぜ企画書が必要とされているのでしょうか。
その理由は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、社内の合意を促すためです。
アプリの開発には、社内のさまざまな部署の協力が必要になります。
そのため、事前に企画書を通してアプリの必要性や具体的な開発方針を理解してもらう必要があるのです。
アプリ開発チームに加わるメンバーのモチベーション向上にも役立ちます。
2つ目は、アプリ開発の目的や方向性を見失わないようにするためです。
アプリ開発を進めていると、多くのメンバーで協議したり、細かい作業に追われたりする中で、目的を見失ったり、アプリを作ることそのものがゴールになってしまったりすることが多々あります。
「なぜアプリを開発するのか」「アプリを開発した後に何を目指すのか」を企画書に残しておくことで、いつでも初心に立ち返ることができるのです。
この2つ以外にも、さまざまな開発要件を定義してそれを可視化したり、リソースの配分を正確に把握したりするのにも、企画書は役立ちます。
このように、アプリ開発において、企画書はさまざまな面で重要な役割を果たすため、プロジェクトの成功に欠かせないものであると言えるでしょう。
アプリを企画する前にやるべきこと
アプリ開発の企画書のポイントを解説する前に、まずはアプリを企画する前にやるべきことを紹介します。
- アプリを作る目的を明確にする
- ターゲットユーザーを明確にする
- 競合アプリを調査する
- ユーザーにとってメリットがあるアプリかどうかを確認する
これらを行っておくことで、アプリの企画段階での基盤が整い、開発プロセスの効率化と成功につながるでしょう。
1 アプリを作る目的を明確にする
アプリ開発においてもっとも重要な準備は、アプリを作る目的を明確にすることです。
プロジェクトの方向性を定めるためにもアプリの目的は非常に重要であり、目的を明確にすることで、開発プロセス全体がより効果的かつ効率的に進められます。
目的が明確であれば、開発チームはその目的に向けて具体的な機能やデザインを考えることができます。
反対に目標が明確化されていないと、途中で開発の趣旨や方向性を見失ってしまいかねません。
アプリの目的を決める際には、ユーザーの問題を解決することや特定のニーズに応えること、業務効率を向上させることなど、さまざまな要素を検討します。
まずはビジネスにおける現状の課題点を洗い出し、理想像とのギャップを明確に把握しましょう。
そのうえで具体的な数字に落とし込んだ目標も立てられるといいでしょう。
目標を決める際には、数値を用いて具体的に定めることが重要です。
「とにかくブランドの認知度を上げたい」など、達成したか達成していないかが測れない目標は望ましくありません。
「リリース後1年でダウンロード数50,000件突破」「商品の購入率10%向上」など、明確な目標を立てます。
2 ターゲットユーザーを明確にする
アプリ開発では、ターゲットユーザーの明確化も欠かせません。
ターゲットユーザーを特定することで、そのユーザーのニーズや要求を理解し、アプリを最適化することができます。
リリース後もきちんと利用されるアプリを開発するためには、事前にターゲットユーザーについて、以下のような項目を把握しておくことが重要です。
- 属性(年齢・性別)
- 住んでいる地域
- 興味・関心
- 行動パターン
- 今困っていること
- 具体的なニーズ
- 保有しているアプリの性質・印象
- インターネットやアプリの利用状況
これらの項目を通じて、開発予定のアプリがどんな人にどのような状況で使ってほしいのかを整理しましょう。
ユーザーのニーズや行動パターン、課題などを明確にするためには、アンケート調査や市場調査などの手法を活用するのもおすすめです。
3 競合アプリを調査する
アプリを企画する際には、既存の競合アプリを調査することも大切です。
競合アプリの調査により、同様のアプリが既に存在しているかどうかや、競合となるアプリにどのような機能や特徴があるかを把握することができます。
また、競合アプリの調査は、自社のアプリの差別化ポイントを見つけるのにも効果的です。
他のアプリが提供していない価値やユニークな機能を見つけ出し、それを自社のアプリの特長として活かすことができます。
分析には、「SWOT分析」などのフレームワークを活用しましょう。
SWOT分析とは、競合や市場状況などの自社を取り巻く外部環境と、自社の商品力やブランド力などの内部環境を、それぞれ強み・弱みに分類して分析する手法で、プロジェクトの状態を把握するのに役立ちます。
4 ユーザーにとってメリットがあるアプリかどうかを確認する
アプリを開発する際には、ユーザーにとってメリットがあるかどうかを必ず確認します。
アプリを開発しようとすると、「アプリを通じてユーザーにどう行動してほしいか」など、企業側のメリットばかり考えてしまいがちです。
しかし、そもそもユーザー側にメリットがあるアプリでないと、多くの人に利用してもらうのは難しいでしょう。
ユーザーにとってメリットがあるアプリであれば、それを活かしてユーザーエンゲージメントを高めることができます。
逆に、ユーザーにとって十分なメリットがない場合は、競合アプリや代替手段に流れてしまうでしょう。
ユーザーがアプリを利用する理由や期待する効果、解決したい課題を明確にして、それを実現することが求められるのです。
アプリ開発の企画書で押さえる10のポイント
アプリ開発で企画書を作成する際には、以下の項目を必ず盛り込むようにしましょう。
- アプリの種類
- 対応させるOS
- 軸になる機能
- デザイン
- アプリの容量
- マネタイズの戦略
- 開発スケジュール
- 開発費用
- プロモーション施策
- 評価指標
それぞれ詳しい内容と押さえておくべきポイントを解説します。
ポイント1 アプリの種類
「アプリ」といっても、スマホやタブレットで利用できるアプリにはいくつかの種類があります。
まずはそれぞれの特徴を理解し、自社に最適なものを選ぶことが重要です。
以下にアプリの種類とそれぞれの特徴、メリット・デメリットをまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
アプリの種類 |
ネイティブアプリ |
Webアプリ |
ハイブリッドアプリ |
詳細 |
スマホにダウンロードして利用する一般的なアプリ |
ユーザーがWebブラウザを介してアクセスするアプリ |
Webアプリとネイティブアプリの特徴を併せ持ったアプリ |
メリット |
・オフラインでも機能の一部を利用できる ・デバイス機能を活用できる ・アプリストアの集客力を利用できる |
・比較的低コストで開発できる ・ダウンロードが必要ない ・OS環境に依存しない |
・開発コストが安価 ・デバイス機能を活用できる ・OS環境に依存しない |
デメリット |
・開発コストが高い ・アプリストアの基準をクリアする必要がある |
・デバイス機能を活用できない ・使用するためにデータ通信が必要 |
・一部の機能はオフラインで使用できない ・動作がやや遅い |
この表を見ると分かるとおり、3つのアプリはそれぞれ費用感やメリット・デメリットが異なります。それぞれの良い点・悪い点を考慮した上で、自社に適切なものを見極めることが重要です。
中には、ネイティブアプリとWebアプリ両方を提供している企業もあります。
まずはどちらか一方を開発し、ユーザーの利用状況や意見を踏まえてもう一方を開発するという方法もあるので覚えておきましょう。
アプリの種類については、こちらで詳しく解説しています。
ポイント2 対応させるOS・機種
アプリが対応する予定のOS(オペレーティングシステム)を指定します。
主要なOSとしては、iOS(Apple)、Android(Google)があります。
また、OSだけでなく対応機種も検討する必要があります。
できれば両方のOS、さらに多くの機種に対応したアプリを開発するのがベストですが、予算や工数の影響で絞らなければならないケースもあるでしょう。
その場合には、ターゲットユーザーのデバイス利用状況や需要を考慮し、どのOSや対応機種に重点を置くかを選択することが重要です。
一般的には対応するOSや機種の幅が広がれば広がるほど、予算や工数がかかります。
そのため、自社の開発コストを考慮しながら決めていきましょう。
ポイント3 軸になる機能
アプリの中心となる主要な機能や特徴を明確にします。
予算や工数が潤沢にあればあらゆる機能を兼ね備えたアプリを開発できますが、それだとかえって使いにくいアプリになってしまう可能性もあります。
ユーザーへ提供したい価値を具体的に定め、その価値を提供できる機能に重点をおきましょう。
例えば、商品の多さが特徴の家具ブランドであれば、一気に多くの商品を見られるカタログ機能や実際に自分の部屋に家具を配置したかのように確認できるバーチャル機能などが挙げられます。
自社の商品やサービスの強みも考慮した上で考えましょう。
ネイティブアプリの場合、メッセージング機能、位置情報サービス、音声認識など、スマホの機能を活用したものもおすすめです。
ポイント4 デザイン
アプリのデザインに関する要件です。
これには、カラーやフォント、アイコンのスタイル、画面レイアウト、ユーザーインターフェースのデザイン指針などが含まれます。
どれだけ便利な機能を備えたアプリでも、デザインがイマイチだとユーザーが離れてしまう可能性があります。
デザインはユーザーエクスペリエンス(顧客体験)に大きな影響を与えるため、魅力的で使いやすいデザインを目指すことが重要です。
デザインを決める際は、競合他社が提供するアプリを実際に使ってみて、「使いやすかった点」「使いにくかった点」をそれぞれピックアップして参考にするのがおすすめです。
実際に使ってみることで、机上では思いつかなかったアイデアも出てくるでしょう。
ただし、デザインにはブランドイメージやターゲットユーザーの好みを含めることも重要です。
単に競合の真似をするのではなく、あくまでも参考程度に留め、自社の強みを活かしたものを提供しましょう。
ポイント5 アプリの容量
アプリの容量制限を考慮し、目安となる容量を設定します。
目安の容量を明示することで、開発チームは容量の最適化やストレージ管理に取り組むことができます。
アプリの容量は、ユーザーがアプリをダウンロードする際のストレージ要求に影響を与えます。
最近のスマホやタブレットは容量の大きいものが主流ですが、中には容量が原因でアプリのダウンロードを躊躇してしまうケースもあることを理解しておきましょう。
ポイント6 マネタイズの戦略
アプリ開発の企画書には、マネタイズの戦略についても詳細に記載しておきましょう。
マネタイズの戦略とは、アプリを通じてどう自社の売上アップを図るかを明確化したものです。
ただし、マネタイズの戦略とひとことにいってもその内容は多岐にわたります。
広告表示、アプリ内課金、有料ダウンロードなどで収益を得られる場合もあれば、アプリ自体に収益化の仕組みがなくても、アプリを通じて有益な情報を発信することで自社の商品やサービスの売上が上がることもあるでしょう。
そのため、アプリを含めた全体のマーケティング施策を検討することが大切です。
ポイント7 開発スケジュール
アプリ開発の企画書には、開発スケジュールの記載も欠かせません。
企画段階で開発スケジュールを決めておかないと、ズルズルと長引いてしまい、リリース予定日に間に合わない可能性があるためです。
開発スケジュールには、各フェーズ(要件定義、デザイン、開発、テストなど)の期間やマイルストーン(プロジェクトや業務進捗における区切りや中間目標のこと)を設定します。
フルスクラッチ開発(0からアプリ開発すること)の場合、希望の要件によって期間は大きく変動しますが、要件定義とデザインに1〜2ヶ月、開発と実装に2〜3ヶ月、テストや改善に1ヶ月、全部で半年ほどかかるのが一般的です。
開発スケジュールを明確化しておくことで、開発プロセス全体を見通しやすくし、期日や納期の遵守を確保することにつながります。
また、プロジェクトの進捗管理やリソースの配分を効果的に行うため、各フェーズのタスクや担当者、依存関係を明示しておくことも重要です。
ポイント8 開発費用
アプリの開発にかかる予想費用を詳細に記載します。
開発チームの人件費、ツールやライセンスの費用など項目ごとに予算を算出し、合計費用を明示しましょう。
そうすることで、予算管理や資金調達の計画を立てることができます。
機能を増やせば増やすほど時間や工数がかかるため、それに伴い開発費用も上がります。
費用をできる限り抑えたいという場合は、パッケージアプリなどのアプリ開発サービスを活用することを検討するといいでしょう。
パッケージアプリの既存機能を活用できれば、フルスクラッチ開発と比べて大幅に費用を削減できます。
アプリの開発費用については、こちらで詳しく解説しています。
ポイント9 プロモーション施策
アプリは開発したらそれで終わりというわけではありません。
多くのユーザーを獲得し自社のビジネスを成功させるためには、アプリのダウンロードを促進するためのプロモーション施策が必要です。
アプリ開発の企画書には、リリース後のプロモーション施策についても記載しておきましょう。
これには、ASO(アプリストア最適化)、SNSの活用、広告施策などが含まれます。
期間限定のクーポンの配布やキャンペーンの実施なども効果的です。
ターゲットユーザーの特性やアプリの特徴に合わせたプロモーション施策を計画し、アプリの知名度向上やユーザー獲得につなげましょう。
事前にしっかり計画立てておくことで、マーケティング活動の効果を最大化するための戦略を立てることができます。
ASOについては、こちらで詳しく解説しています。
ポイント10 評価指標
企画段階で、アプリの成功を評価するための指標を設定しておくことも重要です。
評価指標の設定により、アプリのパフォーマンスを定量的に評価し、改善や戦略の見直しを行うことができます。
評価指標を決める際に大切なポイントは、KGIとKPIに分けて考えること。
KGIとはビジネスの最終目標のことで、アプリ開発においては売上や利益の具体的な金額などが該当します。
そして、KGIの達成のために必要なのがKPIです。
ダウンロード数や利用率、クチコミ評価などいくつかの項目に分けて設定しましょう。
また、ユーザーフィードバックや分析ツールを活用して、評価指標を定期的にモニタリングし、アプリの改善に反映させることも重要です。
KGI、KPIについては、こちらで詳しく解説しています。
アプリを開発する際の注意点
最後に、アプリを開発する際の注意点を2つ紹介します。
- 著作権や肖像権には十分に配慮する
- 法的事項を事前に確認しておく
それぞれ詳しく見ていきましょう。
注意点1 著作権には十分に配慮する
アプリ開発においては、他人の著作物(画像、音楽、文章など)を使用することもあるでしょう。
この際には、著作権を侵害しないように十分に配慮する必要があります。
著作権法には、著作物の使用には許可が必要な場合があることや、一部の著作物は利用条件や制限があることが定められています。
したがって、アプリ内で使用するコンテンツには、ライセンスを取得したものや著作権フリーのものを使用するか、著作権者から正式な許可を得たものを使用しましょう。
また、街中で撮影した写真や動画をアプリ内に使用したい場合、肖像権に注意する必要があります。
撮影したものの中に顔が特定できる人物が写っていないか、きちんと確認するようにしましょう。
もしも写っている場合は、モザイク加工をしたり切り取ったりするなど、適切に対処してください。
著作権や肖像権に対する適切な配慮は、法的トラブルやイメージの損失を回避するために非常に重要です。
注意点2 法的事項を事前に確認しておく
アプリ開発にはさまざまな法的事項が関わってきますので、開発前に法的な観点から事前に確認することが重要です。
例えば、プライバシーポリシーや利用規約の作成、個人情報の取り扱いに関する法律(GDPRなど)への適合性の確認、広告表示に関するガイドラインの遵守などが該当します。
特に、ユーザーの個人情報やプライバシーに関わる事項は慎重に取り扱う必要があるため注意しましょう。
法的事項に関する確認や対策を事前に行うことで、法的なリスクを最小限に抑え、アプリの安全性と信頼性を確保することができます。
まとめ
本記事では、アプリ開発に企画書が必要な理由を解説するとともに、アプリを企画する前にやるべきこと、さらに、企画書を作成する際に押さえておくべき10のポイントを紹介しました。
アプリ開発の企画書は、社内の合意を促すため、そしてアプリ開発の目的や方向性を見失わないようにするために欠かせません。
アプリを開発する際には、本記事で紹介した項目やポイントを参考に、必ず作成するようにしましょう。
また、アプリを開発する際には、事前に目的やターゲットユーザーを明確にすること、競合アプリを調査しておくこと、ユーザーにとってのメリットを考えることも重要です。
アプリ開発に疑問や不安な点がある場合は、ぜひアイリッジにご相談ください。